OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

タル・ベーラ 伝説前夜
『ファミリー・ネスト』『アウトサイダー』『ダムネーション/天罰』公開記念インタヴュー

2. 『ファミリー・ネスト』を作ったことで自分は映画監督になった。
 そして、その後、映画学校に行ったのです。

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『ファミリー・ネスト』
Q:『ファミリー・ネスト』ではジェンダーギャップが浮き彫りになっています。あなたがこの作品を発表したのは1977年ですが、その頃、一般の人々はジェンダーギャップにどの程度注意を払っていたのでしょうか?あなたは当時どのような意図で女性を主人公にして女性の苦境を撮られたのでしょうか?
タル・ベーラ:まずこの家族に出会ったのは、私が19歳の時でした。主人公イレン(ラーツ・イレン)とその夫、そして、小さな娘は、やむを得ぬ事情から、まるで“穴”のような建物を不法占拠して住んでいたのですが、警察に捕まって追い出されてしまった。私は、そのことに対して激しい怒りを覚えた。その怒りを基に映画は撮影され、そうした怒りが表現された映画になった。キャスティングの段階で、父親や母親、兄弟といった役柄を付け加えていって、架空の家族像を創り上げた。もちろん物語はフィクションで、映画の中で起きていることは、こういうこともあり得るんじゃないかということを描いていたものだ。非常にシンプルな映画で、撮影は5日間で終えた。とても急ぎ足で作った作品だが、国内だけではなくマンハイム・ハイデルブルク国際映画祭でグランプリを受賞したり、国際的にも凄く成功をした。この映画を作ったことで自分は映画監督になり、その後で、映画学校に行った。というのは、別の作品を手掛けるために資格が必要だったから。それが自分の人生の道のりです。

Q:ということはジェンダーギャップは、それを撮ろうとしたわけではなく、そう撮れてしまったと。
タル・ベーラ:主人公のイレンはとても強い女性でもあったので、当然ああいう描写になったんだ。(イレンを演じたラーツ・)イレンとはその後も『サタンタンゴ』や『ヴェルクマイスター・ハーモニー』で一緒に仕事をしているよ。友人とそうやって仕事を続けられるのはとても素敵なことだ。互いに信頼していなければ関係は続かないし、互いに繋がりあい、ともに成長していくことが出来るなんてとても美しいことだと思う。


『サタンタンゴ』
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