OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

タル・ベーラ 伝説前夜
『ファミリー・ネスト』『アウトサイダー』『ダムネーション/天罰』公開記念インタヴュー

3. 古いやり方では新しい問いに答えることは出来ない。
 だから、前に進むしかない。

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『アウトサイダー』
Q:『ファミリー・ネスト』にはレイプの場面がありましたが、その後、加害者と被害者が一緒にバーに行って、どちらも何もなかったかのように平然としているように見えたのが驚きでした。映画冒頭で誰にでも起こり得る出来事という字幕が出てくるのですが、なぜこのように描いたのでしょうか?
タル・ベーラ:それは文字通り、こうした酷いことは実際の人生でも起こり得ることだということだよ。マンハイムの映画祭で上映した時、フェミニストのグループが私の映画に対して抗議をしてきた。彼女たちは「こんなことが起きるなんて信じられない」「なぜレイプ後に彼女はこんな行動がとれるのか」と訴えた。私は、彼女が起きてしまったことに対して何も出来ないでいる姿を描いた。なぜなら、とても冷酷なことだが、こうしたことは実際の人生でも起きていることだ。でもこのシーンの後に、重要なシーンが続く。妻の元に戻った男とその妻が抱擁をする、その場面からはお互いがどれくらい愛しあっているのかという感情が伝わってくる。人生にはこうしたことが起こりうる。私としては、人生のロジックとしてこういうこともあるのだということを見せたかった、その一心でこのシーンを入れたんだ。

Q:今回、監督の初期作を拝見してとりわけ『アウトサイダー』には近作とはまた違った親しみを感じました。監督はメガホンをとられなくなって映画学校で若手を輩出するような立場にも居られたと思いますが、ご自身の若い頃の作品を折を見て見返すことがあるのかということと、ご指導をする立場となって、かつてのご自身の作品に対して、こうすれば良かったとか、思うことがあれば教えてください。
タル・ベーラ:まず自分が作った作品を観るのは好きではありません。そもそも作品自体をよく覚えているし、そこで自分が何をしたかというのも分かっているから改めて見る必要がない。一つ理解していただきたいのは、映画を作る時には、どういう風にやるのか、その時にはその時なりのやり方というものがある。後になって、新しい疑問であったり、こういう風にすれば良かったみたいなことが思い浮かぶかもしれないが、古いやり方では新しい問いに答えることは出来ない。だから、前に進むしかないと私は考える。私にとって『アウトサイダー』に関して重要だったのはこういうことです。つまり、『ファミリー・ネスト』はドラマだけれども、私は文学、とりわけ小説をとても愛好しているが、文学と同じような壮大な形で何かを作ることが出来ないだろうか?ドラマとは違うフォルムで、と思ったのが『アウトサイダー』だった。小説のように何か常に浮遊している、そういう作品が面白いんじゃないかと思っていた。当時の自分にとって、それが興味をそそるフォルムだった。主人公たちとは実際に小さな街で出会い、彼らと出会った直後に、こういう風に作ればいいんじゃないかというアイディアが自ずと浮かんできた。当時、私は24歳ぐらいで、とても若かったけれど、自分たちの世代について何かを表現したい、ヒッピー的な生活について表現したい、あるいはそれが面白いんじゃないかという感覚があった。当時の自分にとって、この作品を作ることはとても良いことに思えたんだ。


『アウトサイダー』
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