OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

タル・ベーラ 伝説前夜
『ファミリー・ネスト』『アウトサイダー』『ダムネーション/天罰』公開記念インタヴュー

5. 今も民主主義のために私たちは戦い続けている

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『ダムネーション/天罰』
Q:今回の3作品は、いずれもハンガリーが民主化される前の時代の作品ですが、その時の制作状況とその後の映画を撮る時の制作状況で違うことがあったら教えてください。
タル・ベーラ:まず今も尚、民主国家と呼べるのかどうか分からない。当時、自分が若い頃は政治による検閲によって私たちは苦しめられていたが、今は市場による検閲に苦しんでいる。政治に苦しめられるのか、市場に苦しめられるのか、どちらを選ぶのかは皆さんにお任せする。今も民主主義のために私たちは戦い続けている。

Q:『ファミリー・ネスト』は5日で撮ったと仰っていましたが、『ダムネーション/天罰』はどのくらいの時間をかけて撮られたのでしょうか?また、作品が進むにつれて、ロングショットが増えていったという印象がありますが、それについてはどうお考えでしょうか?
タル・ベーラ:撮影日数に関しては『ダムネーション/天罰』は30日間くらいだったと思う。私は、長い過程を経て映画を作ってきたが、1本目の『ファミリー・ネスト』と最後の作品『ニーチェの馬』を比べてみれば、似ているところはたくさんある。それは、長めのモノローグであったり、長めのテイクであったりするだろう、一番最初の作品から同じような手法を使っていたということだ。技術的なところで同じようなアプローチをしているところもある。ただ、意識の上では、社会がどうしようもないんだというところから映画を作り始めて、でもそれだけが問題じゃないということに段々と気付いていった。問題は社会的なことだけではなく、存在論的なものだというふうに考え方が移っていき、それが映画作りに反映されていった。そして世界をより理解できるようになり、大きな意味での宇宙(ユニヴァース)というものを見せていきたい、という考えに従って自分の視野もどんどん幅広いものになっていた、その事自体が、あなたが言ったロングショットに影響していると言える。世界はとても広く、あまりにも大きいのだということを認識する必要がある。ぜひ観客の皆さんには、よく目を見開いて、心を開いてこれらの作品を見ていただきたい、そして、もし出来れば、楽しんで欲しいと願っている。


『ニーチェの馬』
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