OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

塚田万理奈『満月、世界』インタヴュー

2. フィクションの良いところって、これはフィクションです、と言うことによって
  守れるものがあると思うんです

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OIT:『The UP series』は、ドキュメンタリー作品ですが、塚田さんが作ろうとしているのはフィクションですね。
塚田万理奈:私が自分で見るのはドキュメンタリーが結構好きなんですけど、フィクションを勉強してきたということもありますし、撮りたいと思うものは、もう過ぎてしまった自分の人生の過去であったり、悔しい思いが忘れられなくて、それを撮りたいと思ったりするので、改めてフィクションとして作るしかないんです。あと、フィクションの良いところって、これはフィクションです、と言うことによって守れるものがあると思うんです。子どもたちをドキュメンタリーで追うと、本人過ぎて、守れないものがある気がします。なので、フィクションですということで子どもたちを守れる部分があると思って、作っているということはあります。

OIT:その『刻-TOKI-』から派生して出来たのが『満月(みつき)』と『世界』ということですね。
塚田万理奈:はい、そうです。

OIT:それぞれの作品の作り方は一緒ですか?
塚田万理奈:いえ、『刻-TOKI-』は私の人生を題材にして彼女たちがそれぞれの役を演じているものですが、『満月』と『世界』は、満月ちゃんと秋ちゃんと出会って、本人たちの人生で悔しかったこととかの話を聞いて、それを基に私が脚本を書いて、彼女たちが本人の役を演じているものです。別プロジェクトのようなものですので、『満月』や『世界』の役が『刻-TOKI-』の中に取り込まれたりすることはないです。

OIT:『刻-TOKI-』はご自身の体験を基に脚本を書いたとのことですが、『満月』と『世界』の脚本はどのように書いたのですか?
塚田万理奈:満月という子がとても魅力的だったので、この子のことを撮りたいと思って、満月にICレコーダーを渡して、満月は1ヶ月位、自分の生活音を録ってきて、私はその生活音を聴いて、それを基に脚本を書きました。それが『満月』で、『世界』は、秋ちゃんと話し合って、秋ちゃんの吃音のことを書くのに、例えば、秋ちゃんが友達と喋る時、どういう空気になる?とか、秋ちゃんに聞いたりして、一緒に脚本を書きました。

OIT:脚本を作った後、絵コンテは作りましたか?
塚田万理奈:コンテはカメラマンが書いてくれて、それを私が確認するんですけど、現場で結構変わります。現場で改めて仕切り直す感じです。

OIT:フィルム撮影の『満月』とデジタル撮影の『世界』では、撮影現場での違いはありましたか?
塚田万理奈:そうですね、デジタルの方は光に強いので、フィルム撮影の時の方が“光”を大事にしたと思います。自然光とか太陽の光を待つ時間が、フィルムの方では若干多かったかなと思います。フィルムの方が繊細ですので。それ以外はほとんど変わらないです。

OIT:今までフィルム撮影の経験が多いと仰っていましたが、それはどこかの制作現場でのことなのか、あるいは、学生時代のことなのでしょうか?
塚田万理奈:学生の時です。大学では映像制作の中でもフィルム撮影を専攻していましたので。

OIT:今でも日大芸術学部ではフィルム撮影をやっているのですか?
塚田万理奈:つい先日、話を聞いたばかりなんですけど、今はほとんどデジタルで、フィルム撮影も選択は一応出来るようなんですけど、フィルムを選択すると、自力で結構やらないといけなくて苦労が多いようです。私の頃は日芸にも、まだ機材が沢山あったんですけど、今はもう機材もどんどん壊れていって、数も少なくなってると。以前は現像場が大学にあったんですけど、今はもう運営していないみたいで。そうなると、自分でお金を出して、外の現像所を使うしかなくてお金が掛かる。そういう風に手間とお金が掛かるので、フィルムを選ばない学生が増えているということです。

OIT:塚田さんはラッキーでしたね。
塚田万理奈:ラッキーでした。私の頃ですら、もう3〜4人しかいなかったんですけど。

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