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4. 子どもたちとコミュニケーションを取るようになって、自分自身が励まされていた |
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OIT:『世界』の秋ちゃんは実際に吃音があるということですね。
塚田万理奈:吃るのが恐くて黙っちゃうという感じなので、喋り出せないという感じの吃音症ですね。
OIT:吃音のある方というのは結構沢山いらっしゃって、例えば、映画の世界では、ポーランドの巨匠でイエジー・スコリモフスキという偉大な監督さんがいますけれど、この方は映画史に名を残す映画監督で、現在も御年86歳で現役で活躍してらっしゃいます。監督だけではなく俳優としても活躍しています。そういう意味でも、『世界』は、秋が“世界のカッコよさ”を発見していくのがいいなと思いました。
塚田万理奈:ありがとうございます。
OIT:図書室で秋が“世界”について発見をして、家に帰ると寝たきりのおばあちゃんがいて、その横で秋は読書をしている。そこに母親が帰ってきて一悶着があり、秋の“世界”の邪魔をするわけですけど、そこで、ひじょうに美しい“ほこり”が舞うんですよね。あの“ほこり”はCGですか?
塚田万理奈:いえ、あれは偶然なんです。
OIT:へー、そうなんですか。何かを物理的に飛ばしたわけでもなく?
塚田万理奈:いえ(笑)、何も飛ばしてないです。よく美しいって言って頂けるんですけど、意図せず舞ったほこりです。
OIT:じゃあ、本読みしてセリフを頭と体に入れる期間は、俳優さんお二人だけでやっていて、演出は全く入ってないわけですね。
河野知美:そうですね、その期間は全く入ってません。何しろ、セリフが物凄い量だったので。梅田さんには長い間お付き合いいただき本当に感謝です。大変な労力だったと思います。
OIT:“ほこり”ってわざわざ撮影されることがあって、例えば、ヴィム・ヴェンダースの『誰のせいでもない』(2015)という3D映画があるんですけど、とても“ほこり”が美しく撮影されています。雪が降り積もった田舎町が舞台の映画で、物語の内容は忘れてしまったんですけど、“ほこり”が美しく撮られている場面が妙に印象に残っていて、それを思い出したんです。3D映画ですから、ヴェンダースは、その場面をわざわざ撮っていることは間違いないです。あと、黒沢清監督がフランスで撮った『ダゲレオタイプの女』(2016)は、ミステリー・ホラーといった感じの映画ですが、この映画の物語の転換点というべき場面があって、そこで“ほこり”がわっと舞うんです。画面の中ではせいぜい5分の1くらいの領域だったと思うんですけど、それがとても目立つんですよ。それで、黒沢監督にインタヴューした時に、あの“ほこり”は随分とドラマティックなほこりでしたね?と聞いてみたら、よくぞ気付いてくれました、あれはCGで作ったんです、と教えてくださったんです。
塚田万理奈:すごい!さすが黒沢監督ですね。
OIT:ということもあって、あの“ほこり”もCGかなと思ったのですが。
塚田万理奈:いえいえ、私はとてもそこまでは、、、すごいですね。
OIT:その“ほこり”と対になっているのが、“雪”ですよね?あれは物理的に何かを降らせたのですか?
塚田万理奈:いえ、“雪”はCGなんです。『世界』はあの“雪”のためにデジタルで撮ったようなものです。
OIT:なるほど。しかも、あれは秋にしか見えていないという。
塚田万理奈:そうです。よく見て頂いていて嬉しいです。
OIT:あと、『世界』には、音楽では食べていけていないミュージシャンを演じるゆうみさん(玉井夕海)という女性が出てきますが、あの方の存在はフィクションで入り込んできたということですか?
塚田万理奈:そうですね、「ゆうみ」ってほとんど私のことなんですけど、やっぱり、『満月』と『刻-TOKI-』を撮って子どもたちとコミュニケーションを取るようになって、自分自身が子どもたちにとっては関係ないと思う場面で、励まされたりしてたんです。子どもたちって“好きなもの”の話ばっかりするんですよね。そういうのを聞いていると、私も映画の話とか一杯してたなとか、“好きなもの”ってなにかキレイだなと思ったりして、そういうことを考えるようになったし、好きなことをやろうと思って生きてきたのに、自分が映画監督として全然食べていけてないこととか、やっぱりなにか焦りがあるんですよ。でも子どもたちにとっては、私が商業映画の監督かどうかとか、あんまり分かってなくて、“万理奈ちゃんは好きなことをやってる人”って思われていて、それが子どもたちにとっては大事なことだったりするのかなって思います。なので、私が子どもたちと関わることで、気付いたことや、励まされてたことを返せるっていうか、『満月』と『刻-TOKI-』を撮ったがゆえに、秋ちゃんに対して“好きなこと”って大事だよって言えるなって私は思ってたので、その私の存在の主張として映画の中に入れたのがゆうみさんなんです。
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