OUTSIDE IN TOKYO
WOODY ALLEN INTERVIEW

ウディ・アレン『人生万歳!』オフィシャル・インタヴュー

3. エヴァン・レイチェル・ウッドが演じる南部出身の田舎娘メロディーと、
 本作の核心を担う役柄、メロディーの両親

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ボリス以外のキャラクターも個性が際立っている。『アクロス・ザ・ユニバース』(07)の美少女ぶりが未だ記憶に新しいエヴァン・レイチェル・ウッドが、南部出身の田舎娘メロディー役を演じている。


ウディ・アレン:エヴァン・レイチェル・ウッドに関しては、実は僕が彼女を見つけたわけではなく、名前も聞いたことがなかったんだ。妻のスン・イが彼女のことを教えてくれて、美術監督からも話を聞いた。そして出演作品を見て、とても才能のある女優だったので、ここへ呼んで、ちょっと話をして、キャスティングを決めたんだ。

エヴァン・レイチェル・ウッドが演じるメロディーは、ある夜突然、ボリスが住むアパートメントの入口に倒れ込んだ状態で映画に登場する。そんなご都合主義的なストーリー展開が全く気にならないのは、映画冒頭からボリスが本作の語り部としてキャメラ目線で観客に語りかけるというお茶目なナラティブをアレンが選択しているからだろう。『カメレオンマン』や『メリンダとメリンダ』などでアレンファンにはお馴染みの遊び心に満ちたナラティブがストーリーを支えている。

ウディ・アレン:メロディーは少しだけ成長するんだ。はじめはボリスに夢中になっていたが、次第に彼の厭世的な気質に気づき始めていく。たいがいの人々はボリスの嘲りに値するが、それでも全員がそうだとは限らない。彼は極端過ぎて、結局のところ一緒に暮らしやすい人間とは到底言えない。彼女は、これほど強烈な悲観主義と厭世気分に悩まされているわけではないので、例えば、ランディ(映画で出会う若い男、ヘンリー・カヴィルが演じる)と一緒に暮らしたほうが余程幸せなはず。メロディーはもはやニューヨークに着いたばかりの、かわいくておバカな女の子の典型ではないからね。

本作もそのパターンを踏襲しているが、アレン作品は年の離れた男女のカップルの話が多い。若い女性にアレンはどのような魅力を感じているのだろうか。

ウディ・アレン:年齢を重ねた女性と同じだよ。女性の魅力は若かろうが、年を取っていようが同じだ。知的であること、面白いこと、セクシーであること、親切であることと、などなど。男性の魅力だって同じであるべきだ。女性だって相手の男性が年上でも、同年輩でも、年下でも、彼がチャーミングで知的で、セクシーで親切だったら、誰でも好きになるだろう?

確かに。メロディーの母親役を『エイプリルと七面鳥』のパトリシア・クラークソンが演じ、父親役をエド・ベグリー・ジュニアが演じているが、彼らも次第にそのような魅力的な人物に変貌を遂げて行く。

ウディ・アレン:母親のマリエッタ(パトリシア・クラークソン)は、ずっと自分を性的には本当に愛していない男との偽りの人生を生きてきた。そして彼女は、そのことの影響を恐らくまともに受けてしまった。彼女が暮らしていた南部地方のライフスタイルからくる無教養な偏見の犠牲者だったと言ってもいい。でも彼女にチャンスが訪れた時、誰かが彼女の芸術的な側面を阻むのではなく、後押ししてくれた時、突然に開花する準備ができたんだ。アーティストとしての彼女に必要なのは、才能を引き出してくれる人との出会いだけだった。彼女の夫のジョン(エド・ベグリー・ジュニア)についても同じ、彼はカミングアウトしていない同性愛者であり、その機会を与えられて告白してからは、前よりもずっと幸せになった。だから映画自体は物語から想像するよりもずっとセンチメンタルなものだね。なぜなら、結末で母親のマリエッタは新たな人生を見つけて幸せになり、父親のジョンも同様に新しい人生で幸せになった。ただ上手くいく相手がお互いではなかったということなんだ。
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