OUTSIDE IN TOKYO
WOODY ALLEN INTERVIEW

ウディ・アレン『人生万歳!』オフィシャル・インタヴュー

5. 今度は自分が出演する作品を作りたいね、制作中に寝落ちしないですむから。

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さて、ここからは、『人生万歳!』に限らず、アレン映画全般について2010年現在のウディ・アレンが率直に語ってくれた。

今後一緒に仕事をしたいと思う俳優の名前を具体的に挙げて頂けますか?


ウディ・アレン:いや大抵の場合そういう風には考えないんだ。つまりまず脚本を考えて役に一番合う俳優をキャスティングする。それでも、これはよく言ってる話だけど、アメリカ人の中ではケイト・ブランシェットと仕事をしてみたい。もちろん彼女はオーストラリア人だけど、英語を話す人という意味でね・・・。リース・ウィザースプーンともやってみたいね。彼女のために面白い役を書けると思うよ。だけどいつもは物語を先に書いて、それからキャスティングするという順番なんだ。

アレン作品でのケイト・ブランシェット!それは是非実現してほしい組み合わせだ。ところで、現場では、ほとんど指示をしないで俳優たちに任せているという話を聞いたのですが。

ウディ・アレン:いつもそうです。自分の好きに演技をしてくださいと言っている。前々から僕の映画での俳優の演技について何度も質問を受けていて、僕がこう言うと彼らは冗談としか取ってくれないが、そうじゃないんだ。とにかく僕は素晴らしい役者たちをキャスティングして、あとは彼らの邪魔にならないようにするだけ。俳優たちにはできるだけ話しかけないようにするんだ。役者たちがアカデミー賞を受賞するのは、僕が俳優たちをどこか部屋に閉じ込めて彼らにキャラクターを刻み込み、うまく丸め込んでいるわけではないんでね。

ジョン・キューサックがアクターズ・スタジオのインタヴューで、最も嫌いなことは?との質問に、監督から“指示(ディレクション)”を受けることと答えていたが、このレベルの演出家と俳優ならではの”呼吸”のようなものがきっとあるのだろう。この境地まで達すれば、映画監督という職業は最高の職業に思えてくる。

ウディ・アレン:映画監督は快適な仕事だ。何も不満はない。真面目な仕事で、十分な収入がある。エレベーターを動かしたり、タクシー運転手をするよりずっといい仕事で、きれいな女優や面白くて才能ある男優たち、創造的な衣装デザイナーや美術デザイナーたちと働くことができる。働く必要があるなら、実にいい仕事だよ。



しかし、ここまで至る道程は大変なものでしたよね?

ウディ・アレン:たえず苦労しているよ。映画の世界に入るための困難があり、良い作品をつくる苦労があり、違うタイプの映画を作ろうとするときにもまた困難がある。僕はコメディばかりを作ってきたけど、シリアスな作品を作りたいと思った時にも苦労があった。それから何かを変えたいときにも。もっと後には資金を集める苦労があった。

小規模の商業映画の資金難は世界的な現象ですね。

ウディ・アレン:例えば、ニューヨークが舞台の映画をあと50本は思いつくけど、そのための予算がない。ロンドンで撮影した新作(『You Will Meet a Tall Dark Stranger』)は、元々ニューヨークで撮影する予定だったんだけど、そうするにはあと2〜300万ドル必要だったんだ。いつもニューヨークで撮影できる予算があればいいけど、なにしろとてもお金がかかる都市になってしまったことで、僕にとって状況は悪くなる一方だ。免税措置が出来たのは良いことだけど、それ以外のすべての値段が上がっている始末だからね。まあ大作を作るならこんな問題はないだろうけど、僕の作品の予算は限られているから。

『You Will Meet a Tall Dark Stranger』の次の作品も決まっていますよね?

ウディ・アレン:その次は「Midnight in Paris」というタイトルでニューヨークでは来年に公開される。それから次の夏何をしたいか、どの作品を作りたいかをもうすぐ決めなくてはならない。来週かその次の週に、どの国でどんな作品を撮るのかについて結論を出すよ。 今度は自分が出演する作品を作りたいね。ここ何年も出演していないし、このちょっとした変化があれば制作中に寝落ちしないですむからね。

最後に、この映画を観る日本の観客にメッセージをお願いします。

ウディ・アレン:日本の観客の皆さんが長い間僕の作品を支持してくれていることに感謝していますし、皆さんの期待に応える作品を作り続けていきたいと思っています。それからこの作品にどうか失望されないことを・・・というのも次の作品がすぐ控えていますから。次の作品も気に入ってもらえるかもしれないし。皆さんに感謝と御礼を申し上げたいと思います。

クリント・イーストウッドとジャン=リュック・ゴダールが共に80歳の迎えた今年2010年、5歳年下のウディ・アレンは、まだ75歳、上には上のオリヴェイラ御大は102歳を迎えた。映画作家に年齢は関係ない、との噂がまことしやかに流れる昨今、その説はますます信憑性を高めている。何かと暗い話題が多い21世紀のご時世だが、彼らの新作をスクリーンで観ることができるという事実に、何はともあれ、感謝の気持ちを表しておきたい。

また、この記事を、ウディ・アレン作品を始め上質な作品を上映し続けながらも、2011年1月28日を持って17年間(1994〜2011)の歴史に幕を閉じる「恵比寿ガーデンシネマ」に捧げます。

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