OUTSIDE IN TOKYO
YOKO YAMANAKA INTERVIEW

山中瑶子『あみこ』インタヴュー

5. 「悪の権化」の歌は、自作の鼻歌ストックにあったものです

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7



OIT:じゃあカメラマンには口頭で動きを指示をされたわけですか?
山中瑶子:そうです。カメラマンもツイッターで探して、DMでやり取りをした武蔵野美術大学映像学科の学生でした。それまで一度も面識なく”はじめまして”からお願いした方ですが、脚本を読んでもらって彼女なりに飲み込んでもらえたと思います。あとから聞くと、かなり怪しいと思っていたみたいですけど(笑)。そもそも彼女はカメラマン志望というわけでもなかったんですよ。武蔵美の映像学科ならできるだろうと思ってかなり押し付けがましかったかもしれません。この間、初めてちゃんとした短編の撮影現場を体験したんですけど、今思えば、『あみこ』の制作体制ってかなり色々な人に怒られるようなずさんな感じだったなとは思いますね…。
OIT:結局、大学はやめていたにしても、全部学生さんのような立場の方々で作ってしまったということですね。
山中瑶子:18歳から21歳の人たちだけですね。
OIT:撮影の現場では、結構テイクは撮りましたか?
山中瑶子:ラストの”殴る”シーンは70テイクくらいやりました。タイミングとか、指に書いた文字がピンボケしたり、70回くらいやらせてしまったんですけど、その数が異常だということにも気付かなくて、みんな付き合ってくれたから(笑)。もちろん1テイクオッケーとかもあります。
OIT:編集は山中さんが全てやられたのですか?
山中瑶子:大体自分でやりましたが、編集自体やるのも初めてで、何が正解かわからない部分もあったりして、カメラマンと、音楽を作ってくれた二人に手伝ってもらいました。ぴあフィルムフェスティバルの締切に絶対に間に合わせたかったのですが、当初編集期間を一週間くらい空けたにも関わらず、撮影期間が伸びたために結局三日間しか残されていなくて。自分ひとりでやっていると寝ちゃうので、二人ともずっと家に居てもらって。わたしが寝てる間にわたしがやった編集を一通り見てもらい気になるところを直してもらう。直しが上がったのをわたしが起きてからもう一回見て、やっぱり元に戻したり、などしてやっと編集のテンポが掴めていく、という感じでした。
OIT:すごいですね、三日でやったんですか。
山中瑶子:そうですね、結構寝れなかったです。でも冴えてました。
OIT:編集は、リズムが良かったですよね。編集だけではなくて、演出全般、映画自体にリズムがありましたけれども、それは大事なことでしたか?
山中瑶子:それは結構意識しています。撮影しながらそういうリズムが見えてきたりして、編集の段階でかなり明確になっていったんですけど。編集はやり過ぎない方がいいね、ってある方に言われて、そうなんだなと。三日間で良かったのかもしれない。もっと時間があったら、ちょっと冷静になっちゃって、あのテンポ感は出なかったかもしれないです。
OIT:台詞で「悪の権化3つ、裁判所、学校、株式会社」っていうのと、占いをしている時に「人間関係、恋愛、政治」とかっていう台詞があって、3つをポンポンポンと出す小気味良さも面白いと思ったんですけど、その辺は頭の中でイメージが出来上がっていたんですか?
山中瑶子:「悪の権化」の歌の方は、もともと『あみこ』を撮るずいぶん前にあって。自作の鼻歌に歌詞がついてしまうときあるじゃないですか。その時、今の凄く良かったと思うと、たとえ自転車に乗っていてもそこで自転車を止めて録音をするんですよ、忘れる前に。それを昔からよくやっていて、「悪の権化」の歌もそのストックにあったものです。
OIT:鼻歌をちゃんと録音するんですね、それ大事ですよね。
山中瑶子:そうです、もう二度と出てこないので。あの歌を残したいがために、あのシーンを作ったぐらいの気持ちです。

←前ページ    1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7    次ページ→