OUTSIDE IN TOKYO
YOKO YAMANAKA INTERVIEW

山中瑶子『あみこ』インタヴュー

7. 坂本龍一さんが目の前に座っていらして、
 楽しんでる!というのがダイレクトに伝わってきました

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OIT:それは『あみこ』に限らない部分もあるのかもしれませんね。あまり感情を直接的に伝えることをしないアジア人的なコミュニケーションの在り方といいますか。あと、今の日本の女性はこういう感じなの?という反応については、逆に今の日本映画が、若者の潜在的に”あみこ”的な部分を捉え損ね続けていたのかもしれませんね。
山中瑶子:そうですね。日本を含めアジアの若い子たちは、直接声をかけてこなくてもインスタグラムで長文の感想をアップする子が多いです。考えてみたら、わたしもあまり直接言わないです(笑)。一回家に持ち帰りたくなっちゃう。
OIT:坂本龍一さんの『あみこ』を推すコメントも、SNSでは結構話題になりました。
山中瑶子:坂本龍一さんはニューヨークに住まわれていて、ニューヨークで行われている「ジャパン・カッツ」(北米最大の日本映画を紹介する映画祭)のラインナップは毎年確認しているらしく。『あみこ』が気になったから見に来てくださったようです。
OIT:お会いしましたか?
山中瑶子:上映の時、私の前の席に座っていて、髪型が特徴的だから坂本さんぽいなとか思ってたらご本人でした。でも直接お話はしていないです。
OIT:ということは坂本さんが『あみこ』を評価されていることは、まだわからない状態だったわけですね。
山中瑶子:だけど、目の前にいらっしゃるからどこで笑うかが見えるので、ここで笑うんだ~とか(笑)、そういう反応もダイレクトだし、楽しそうにされているなというのはわかったので、すごくホッとしつつ、落ち着かなかったです。トム・ヨークのくだりでかなり笑ってくださいました。
OIT:それはいい体験でしたね。坂本さんの音楽はご存知ですよね?
山中瑶子:もちろんです。『あみこ』の音楽を作ってくれた子はYMOが大好きで、だから今回の劇中のサティのアレンジを相談した時もYMOをかけたりしてました。夢みたいですよね。
OIT:それは嬉しいでしょうね~。劇中のロック、パンク的な音楽というのは山中さんの好みですか?
山中瑶子:好きですね。セックス・ピストルズやINU、ピクシーズとかその辺を高校生の時に聴いていました。
OIT:レディオヘッドの音楽はさすがに使えないけれど、名前が登場します。サンボマスターとか。その辺りは好みから出てきたものですか?
山中瑶子:どちらも大好きですね。固有名詞を出してしまったことで、特にサンボマスターに関しては本来の意図とは違った捉え方をさせてしまったりと、あちゃーと思いつつ…。決してレディへの対比としてあるものがサンボマスター、それぞれをサブカルチャーとメインカルチャーの代名詞として書いたわけではないのです。そんなわけないでしょう!と。この辺はいつかDVDを出したらオーディオコメンタリーで喋りたいです。
OIT:山中さんにとって、音楽は映画作りの中で本当に欠かせない一部という感じですか?
山中瑶子:日頃作業をしている時は無音じゃないと集中できないのでそもそも音楽を聴かないんです。『あみこ』を作るまでは全部が映画中心だったので、好きな映画のサントラからアーティストを知ったり、どちらかというと音楽を学問的に系統立てて吸収しているところがあって。その中で自分の好みはどれか、という感じだったので、あんまり純粋に音楽を楽しんだりはしてなかったですね。かわいそうだった(笑)。
OIT:お話を伺っていると山中さんは元来とても論理的な方で、そういう資質をお持ちなんだけれども、いざ映画を作ってみたら、パンクなものが出来上がった、その強烈な矛盾が面白いですね。
山中瑶子:それはそうなのかなと思っていて、映画があることによって、自分の人としてのアンビバレントさが見えるなと実感します(笑)。

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