最初に『あみこ』の評判を聞いたのは、ツイッターのTL(タイムライン)からだった。『あみこ』は、まず、2017年9月に開催された第39回ぴあフィルムフェスティバルで上映されて観客賞を受賞した。その時の評判がTLに流れて来たのだと思う。その後、『あみこ』は2018年2月のベルリン国際映画祭で上映され、国内外の注目を浴び、ヨーロッパ、北米、南米、アジアの数多の映画祭で上映されることになる。さらには、2018年7月にニューヨークで開催された「ジャパン・カッツ2018」で、坂本龍一氏が『あみこ』を見て絶賛、そうした盛り上がりに背中を押されて私がポレポレ東中野に『あみこ』を見に行ったのは、2018年10月のことだった。反抗的な眼差しで初期衝動のエネルギーを爆発させる瑞々しい映画に刺激を受けた私は、上映直後に、たまたま舞台挨拶に訪れていた山中瑶子監督にインタヴューを申し出た。
以来、『あみこ』の快進撃は続いているが、山中瑶子監督は、もう次の地点へと歩みを進めている。2018年10月の東京国際映画祭で初上映された短編オムニバス映画『21世紀の女の子』に参加し、僅か8分間の短編映画ながらも非凡な才能を発揮してみせたのだ。東京国際映画祭の上映では、山中瑶子監督の『回転てん子とどりーむ母ちゃん』はトップバッターを強烈に飾り、その他の作品をぶっちぎってみせたのだが、一般公開版ではその順序が変わっているという。インタヴューでは、『回転てん子とどりーむ母ちゃん』についてもお話を伺ったのだが、ボリュームが多くなり過ぎたので、まずは『あみこ』編として前半をここに掲載し、後日、『回転てん子とどりーむ母ちゃん』編を後編として掲載することとする。
1. 映画を撮りたいという気持ちが最初にあって、 |
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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):最初に『あみこ』が作られるまでの経緯を教えてください。 山中瑶子:映画を作りたいと思って日芸の監督コースに通っていた時は、1年生ということもあるのか、周囲は積極的に映画を作ろうという感じではなくて。授業内でも、「授業で教えていないことはやるな。やりたいことはサークルで思う存分やれ」というようなことを言う先生もいたり…。映画サークルに入って、そこで仲間を作らないと自主映画を作れないというような状況でした。わたしもサークルに当初入ってみましたが馴染めず、そのうち結局、一緒に映画を作るっていう仲間もろくに作れないまま大学にも行かなくなるわけですけれど。大学に通わないままただ時間だけが過ぎていく。クラスメートは皆監督志望だったので、カメラマンとかも知り合いにいないし、大学へは行きたくないし、どうしたものか?と思いながら、1年間何もせずに過ごして。でも撮らないと何も始まらないし…っていう気持ちだけがあったんです。だから、撮りたいストーリーが最初からあったというよりは、とにかく映画を撮りたいから、後から『あみこ』のアイディアが降りてくるのを待っていましたね。
OIT:大学では演出部とか撮影部とか、専門的に別れていたんですね。
山中瑶子:そうです。入学する時点でコース別なので、監督をやりたかったら監督のコースにしか入れなくて、撮影コースや演技コースの人たちと関わるのは2年生からなんです。1年生の時は、それぞれ関わりがなく専門的なことを学んでいく感じでした。とはいえ1年の前期しか、授業に行ってないですが…。
OIT:あまりピンと来なかったわけですね。
山中瑶子:まあピンとは来ないですね、ものすごく進度もゆっくりなので。授業では3年生になってやっと10分の映画を撮って、卒業制作ですら30分までという制限付きですから。どこの大学もそんな感じなのかもしれませんが。
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『あみこ』 監督・脚本・編集:山中瑶子 撮影:加藤明日花、山中瑶子 録音:岡崎友理恵 出演:春原愛良、大下ヒロト、峯尾麻衣子、長谷川愛悠、廣渡美鮎 ©YOKO YAMANAKA 2017年/日本/66分 『あみこ』 オフィシャルサイト https://wakeupbluelemonade. tumblr.com |
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