OUTSIDE IN TOKYO
Adan Jodorowsky INTERVIEW

アダン・ホドロフスキー『エンドレス・ポエトリー』インタヴュー

4. アレハンドロは、オペラで歌うパメラの姿を見て、彼女こそ私の母親だ!と言った

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6



OIT:ところで、パメラ・フローレスという方について少し教えて頂けますか?『リアリティのダンス』から出ている女優さんで、とても気になる人なのですが、一体どういう人なのでしょう?
アダン・ホドロフスキー:元々は女優さんではなくてオペラ歌手なのですが、俳優としてのエゴがない人で、いつも謙虚だし、セットでもとても優しくて時間厳守で、非常に穏やかな感じの人なのです。

OIT:映画では全然違っていて、強烈な印象を受けるわけですが、それは監督が引き出しているものなのですね。
アダン・ホドロフスキー:アレハンドロが、初めてパメラを見たのは、オペラで歌う彼女の姿だったのですが、その時に、彼女こそ私の母親だ!と思ったらしいんです。アレハンドロには人を見る目があって、彼女は俳優ではなかったのですが、彼女から女優を引き出したい、彼女なら自分の母親を演じるのにぴったりだと思ったと。ブニュエルは晩年の作品(『欲望の曖昧な対象』1977年)で二人の女優に一人の役を演じさせたりしていたわけですが、『エンドレス・ポエトリー』では彼女に一人二役を演じさせているわけですね。

OIT:監督にすべき質問かもしれませんが、ほとんど映画を把握されているように感じますので聞かせて頂きますが、劇中でパブロ・ネルーダの銅像が布で覆われて隠されるという、ちょっとネルーダを揶揄するような描写がありました。あれはチリでネルーダが少し揶揄されるような一面があることを描いていたのでしょうか?
アダン・ホドロフスキー:あのシーンは自分もちょっと不思議に思ったので、周りにいた年配のスタッフに、あの時期のチリでああいう雰囲気が実際にあったのか聞いてみたことがあったんですけど、その時、チリ人は、ネルーダはブルジョアでニカノール・パラこそが本当の詩人だというような風潮があったらしいです。みんな、商業的でブルジョアなネルーダと言いながら、内心は凄く憧れていたような感じというか。ネルーダは、金持ちが好きな詩人でニカノール・パラは貧乏人に好かれていた、そういう風潮が当時のチリにはあったようです。

OIT:当時は時代背景としては、イバニエス独裁政権時代という“暗い時代”が背景にあったのでしょうか?一般の民衆がマスクを付けていて表情が見えない人々として描かれていましたが。
アダン・ホドロフスキー:その考え方は素晴らしいと思いますけれども、皆が仮面を付けていたのは、実は、エキストラが色々な所を見て、目線が色々な所に行ってしまうので(笑)、仮面を付けさせていたんです。

←前ページ    1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6    次ページ→