OUTSIDE IN TOKYO
Adan Jodorowsky INTERVIEW

『エル・トポ』(70)、『ホーリー・マウンテン』(73)、『サンタ・サングレ 聖なる血』(89)といった怪作を連発し、映画史、ポップカルチャー史に名を残すアレハンドロ・ホドロフスキー監督が、『ホドロフスキーの虹泥棒』(90)以来、22年振りに撮った『リアリティのダンス』(13)は、監督自らの少年時代を唯一無二のファンタスティックな映像表現で描いた傑作だったが、ホドロフスキーは、その作品を自叙伝5部作の第1部と位置づけた。その後、クラウドファンディング等による資金調達を経て、約3年後、御歳87歳(2017年現在は88歳)で完成した自伝映画第2部が本作『エンドレス・ポエトリー』(16)である。

強権的な父ハイメ(プロンディス・ホドロフスキー)の抑圧を受け、将来は医者になるよう望まれていた若きアレハンドロ(イェレミアス・ハースコヴィッツ)は、ついに家族の面前で自分は詩人になると宣言する。アレハンドロに好意を抱いていた従兄弟のリカルドは、彼を親戚の芸術家一家に紹介し、アレハンドロはそれを契機に様々な芸術家たちと交わり、詩人として自由な生活を謳歌し始める。青年へと成長したアレハンドロ(アダン・ホドロフスキー)は、敬愛する詩人ニカノール・パラの詩「毒蛇女」のモデルとなった詩人ステラ・ディアス(パメラ・フローレス)と運命の出会いを果たし、蜜月の期間を過ごすが、お互いに独立した詩人である二人にはいずれ別離の時が訪れるだろう。全ては自分の身に起きたことだと語るホドロフスキーは、芸術家、詩人として生きること、そうした生の在り方を、ファンタジックな映画的誇張も含めて、全てを特別な瞬間として描ききっている。

父親に支配された”灰色の日々”からついに抜け出した時から、ホドロフスキーの本当の人生は始まり、以来豊かな”色彩”が彼の人生を彩り始める。本作で初めてクリストファー・ドイルと組んだホドロフスキーは、ドイルの自由な撮影スタイルを賞賛しながらも、デジタルシネマの肝である”カラーグレーディング”だけは誰にも作業を任せなかったという。映画の”色彩”こそが、ホドロフスキーにとって作品の本質のひとつであることを窺わせるエピソードである。

映画の終盤、アレハンドロ青年を演じる実の息子アダン・ホドロフスキーとアレハンドロ・ホドロフスキーが共演するシーンがある。そこでアレハンドロは「私は未来のお前だ。一生を詩に投じ後悔はしていない。幸せに死ぬことを学べるからだ。人の望む通りに生きることが罪なのだ。人生に意味などない。ただ生きるのだ」と語る。時に、人の人生を変えるかもれない映画というものが存在する。南米大陸で生まれた、この極彩色の映画『エンドレス・ポエトリー』はそのような映画のひとつである。そして、生命は循環し、次の世代へと受け継がれていく。『エンドレス・ポエトリー』に主演し、父から”自由”の遺伝子を受け継いだアダン・ホドロフスキーのインタヴューをお届けする。

1. (役作りに関しては)父親の精子の結果が私であるわけですから、
 今まで一生を掛けて準備してきたようなものです

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6



OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):アダンさんが最初に映画に出演されたのは『サンタ・サングレ』(89)の子役でした。その後、ホドロフスキー監督の映画に出演したのは『リアリティのダンス』(14)ということになりますね?
アダン・ホドロフスキー:『サンタ・サングレ』に出た後は、友達が撮った短編映画とかヌーヴェルヴァーグの監督達の作品に少し出ていますが、父の作品に再び出演したのは『リアリティのダンス』ですね。

OIT:その間も、音楽活動を平行してされていたと。
アダン・ホドロフスキー:そうですね、自分自身で7枚アルバムを出しています。プロデュースもやってきました。

OIT:今回は『エンドレス・ポエトリー』でお父さんをモデルにした人物の若い頃を演じているわけですが、役作りはどのようにされましたか?
アダン・ホドロフスキー:もう35年間一緒に暮らしてきましたし、父親の精子の結果が私であるわけですから、今まで一生を掛けて準備してきたようなものですよ(笑)。とはいえ、人形劇であるとか、パントマイムやマリオネットのこと、そして、父親が当時読んでいた本を読んで、その時代に彼が何を考えていたかということを吸収しつつ、15キロ体重を減らしました。


『エンドレス・ポエトリー』
英題:ENDLESS POETRY

2017年11月18日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開

監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影:クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ 他

© 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

2016年/フランス、チリ、日本/128分/スペイン語/1:1.85/5.1ch/DCP
配給・宣伝:アップリンク

『エンドレス・ポエトリー』
オフィシャルサイト
http://www.uplink.co.jp/endless/
1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6    次ページ→