OUTSIDE IN TOKYO
MIYAKE SHO INTERVIEW

青山真治『共喰い』インタヴュー

6. 新たな父になるのか、逃げるか、どっちかしかないですよね

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7



OIT:原作だとそこまでのことは書いてないと思うんですが、映画の方では、円の暴力的な起源が、そう明言はしていないけれども、戦争と全く無関係ではないかもしれないと感じさせます。
青山真治:戦後、色々な所から吹きだまりのように集まってきた人間の一人が円であるという風に言ってますから、いわゆる闇市とかそういう所からの出身者なんだろうなという気はしますね。戦後というのは一つの形で、築き上げたもので、要するにそれは暴力と男性性みたいなもので作り上げられた、それを天皇の死と共に終わらせる物語なんだけど、その代わり女達がまたいるわけで、そこからどう今度は遠馬が出て行けるのか。

OIT:父権と対峙する時はどうしても闘うしかないというか、闘うことになると思うんですけど、母性的なものと対峙した時には恐らく闘うのではなくて新たな対峙の仕方になるのかなと思ったんですけど。
青山真治:新たな父になるのか、逃げるか、どっちかしかないですよね。

OIT:なるほど、逃げると。
青山真治:逃げ続けるっていうことしかないですよね、そうするとWe Can't Go Home Again(もちろん、ニコラス・レイの『We Can't Go Home Again』(1973-2011)にかけて)になるんですよね(笑)。

OIT:もう何処にも帰る場所がない、『EUREKA ユリイカ』の役所広司、、。
今まではそういう意味では、いわゆる“女性映画”は撮っていらっしゃらないかなと思うんですが、そうするとこれからそういうものを撮る可能性があるかもしれないと思ったりしますか?
青山真治:そうですね、撮りたいですね。どんなものになるのか全然考えてないですけど。

OIT:今までご覧になってきた中で、女性映画っていうとこの辺かな、みたいなのは?
青山真治:でも女性映画って言ってすぐ思い浮かぶのって、実はアルドリッチなんですよね。

OIT:あー、『カリフォルニア・ドールズ』(81)
青山真治:『カリフォルニア・ドールズ』もそうですし、『女の香り』(68)っていうのが好きで、これ日本で未だにDVD出てないですけど、去年アメリカでやっと出たんですけど、とか、『何がジェーンに起ったか?』(62)とか。ああいうことになっちゃうんですかね、やっぱり自分の中で探すと。

OIT:『女の香り』は拝見してないんですが、『何がジェーンに起ったか?』はかなりドロドロしていますね。日本映画だとよく言われるのが成瀬でしょうか?
青山真治:成瀬が女性映画かっていうとちょっと微妙で、女性映画って一概に言うと、必ずそこには問題を引き起こす男性がいるんで。言ってみれば『晩菊』(54)みたいなものだよねっていう、『晩菊』は女性映画と言えるかなと思ったら、『晩菊』って殆ど『何がジェーンに起ったか?』に近いような、というような発想がどんどん頭の中を巡って行く(笑)。

OIT:中上健次の名前がフォーラムの会見で監督の口から出てましたけど、中上健次は、最後に「軽蔑」という小説で男女は対等だっていうことを書こうとしたけれども、女性が主人公の小説っていうのは恐らく無いですよね。
青山真治:「鳳仙花」っていう極早い時期の作品で、秋幸の母のフサの物語が一つあるんですけど、ちょっと成瀬の『あらくれ』(57)みたいな話ですね。

OIT:母親の物語っていうことですか?まあ、ご自分のではなくても。
青山真治:うーん、若い頃のっていうのがつくのかな、そういうものかもしれないですよね。女性映画っていって思い浮かぶのは母親の若い頃ならなんとなく想像がつくみたいな。
1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7