OUTSIDE IN TOKYO
HYUNRI & M. YAMAMOTO INTERVIEW

玄里(ヒョンリ)『水の声を聞く』インタヴュー with 山本政志

3. “ヨンドゥンク”、儒教以前のアニミズム

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OIT:脚本は事前にちゃんと出来上がっていましたか?
玄里:『〜プロローグ』があって、本編を書くってなって、届いた脚本が168ページありました。その脚本が素晴らしかったんです。監督、本気だなと思って、それが凄く嬉しかったです。
OIT:撮影はどれ位かけましたか?
山本政志:トータルで40日くらいかな。韓国でのロケとか。冬に撮ったシーンも入れて、全部で1ヶ月半くらい。
玄里:それ位でしたか?もっと長かったような気がしますけど、2ヶ月位とか?あ、リハーサルを入れると、かな。
OIT:事前にリハーサルをやったんですね?
玄里:監督が、どこからか、本物の巫女さんを連れていらして、その巫女さんについて2週間位儀式の勉強をしたんです。踊りとか仕草とか。
OIT:韓国のシーンで、本物の巫女さんらしき人たちが踊っているシーンがありましたが、あれは実際に行われているものをドキュメントしたものですよね?
山本政志:そうだね、いつ儀式が行われるか、事前にスケジュールを調べて狙って撮ったものだね。“ヨンドゥンク”っていって、1年に1回行われる儀式で、島の神様が一同に集まって、それを送り出すという儀式。
OIT:監督が連れていらっしゃった巫女さんも、同じ宗派の方だったんですか?
山本政志:宗派っていうよりは、儒教以前のアニミズムなんだよね。今はもう大分廃れてきてて、済州島でも結構廃れててね、最後のシーンでお祈りする聖地みたいな所とか、結構探すのも大変だったんだけど。
OIT:あの凄い木のあるロケーションですね。
山本政志:あれもね、ああいう聖地はもう数カ所しか残っていなくて、あそこがやっぱり一番良かったんだよね。
OIT:あの宗教のベースは、儒教以前のアニミズムだったんですね。
山本政志:そうそう、日本で言うと、沖縄のユタとかに近いのかな。
OIT:なるほど、それはちょっと見ていて分らなかったですが、玄里さんはそうしたことは監督から知識として教えられたわけですか?
玄里:そうですね、全然知らなかったので、自分でも調べてみたりはしたんですけど。私の母方がキリスト教なので、何かを“信じる”ことであるとか、そうした考え方については、それほど拒否感はなかったんですけど、アニミズムについて全然知りませんでしたね。
山本政志:彼女は、でも1週間ずーっと、その巫女さんについて、一緒にやってたよね。俺はさ、暑いから、ちょっと付き合ってられなかったけど(笑)
玄里:(笑)午前中に巫女さんの練習して、午後にお芝居のリハーサルだったんですけど、監督は、朝チョロっと来て、おっ、マシになったじゃんとか、チラッと一瞬見て、昨日は飲み過ぎたよ、とか言って帰って行くという(笑)。その巫女さんが、本当に人を見抜く人で凄かったんです。プロデューサーの村岡さんが部屋に入ってきた瞬間に、彼女がもの凄く嫌な顔をしたんですよ。どうしたんですか?って聞いたら、今、この中に、凄く胃が悪い人が入ってきたって言うんですよ。そうしたら、村岡さんが、最近飲み過ぎて胃が荒れてるんだよって。巫女さんは、変な匂いがするからわかるっていうんです。本当に臭いわけではなくて、嫌なオーラを感じとってるっていうことなんですよね。
山本政志:彼女は本物なんですよ。日本でも何人もいないくらいの人。だから、玄里の所作は、これで充分ってくらいのところまで上がってたんだけど、それを、俺が、これはインチキだからさ、って言ってぶっ壊したんんだよね(笑)。
玄里:もうあの1週間は何だったんだろう!?って感じで、かなりちゃんと儀式を踊れるようになってたんですけど、単調でアホっぽい動きに変えられちゃって。本当に何だったんだろうって思いました。
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