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3. 黒沢清監督の『岸辺の旅』(2015)でも浅野さんは素晴らしかった。 |
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OIT:キャスティングについて聞かせてください。浅野忠信さんに深瀬昌久を演じて欲しいということを最初から考えていたそうですね。何か特定の作品を見て、そのように決めていたのでしょうか?
マーク・ギル:そうですね、まず一番最初に見たのが『殺し屋1』(三池崇史/2001)でした。一目見て、役者として恋に落ちたという感じです。それ以来、彼が出ている作品は全て見ていると思います。譬え作品自体は今一つの出来栄えだとしても、彼自身はいいんです。彼は何でも出来るから。『レイブンズ』は彼のために書き下ろしたようなものです。黒沢清監督の『岸辺の旅』(2015)でも浅野さんは素晴らしかった。幽霊を演じる役で、今までの彼が演じた役柄とは正反対な感じがしました。“深瀬”はもしかしたら、その延長線上にあると言えるかもしれない。そうして、20年間、彼を見てきて、私の俳優リストのトップにいたのが浅野さんだったのです。
OIT:浅野さん、本当に素晴らしかったですね、とりわけ、その繊細さが。
マーク・ギル:監督の仕事の90%はキャスティングにあると思っています。いい役者であれば信頼するしかない。時に、監督の仕事は、演出することにあるのではなく、信頼することにあると思うこともあります。俳優たちがやっているのはマジックで、それを見る最初の観客が私なんです。自分が観客になって、ヘッドフォンをして自分が作っている映画を目の前で見ている。今、自分が見ているものを信じることが出来て、私の目の前の人間が自分のテイストに合うことをしてくれているならば、私はそれで大満足です。脚本家として、浅野さんや瀧内さんのような役者が、私が書いた脚本を体現してくれる、その上、その物語を自分たちのものにしてくれるのであれば、それ以上に嬉しいことはありません。
OIT:現場では俳優の演技をモニターを通して見ていますか、それとも、直接見ているのでしょうか?
マーク・ギル:過去には両方やっていたけれど、今回は、いくつかのロケーションはとても狭い場所で、撮影監督とカメラが入れるかどうかという感じ、そこに役者もいて、トイレには録音スタッフがいて、その他のスタッフはみんな外にいる、私は一番外の遠いところにいる、なんていうこともありました。基本的には、役者にしてみれば、モニターの前にいるのではなくて、僕に直接見ていて欲しいと思うはずです。そこに監督がいなければ、こいつ何してんだ?って思われることになると思うんですね。モニターでどのように写っているかということを見ることも重要ですが、彼らの演技を直接見ることで、その場で思いついたアイディアを試す、ということはやりやすくなります。
深瀬は、いや、すみません、浅野さんは、ですね(笑)。つい“深瀬”と言ってしまう、あまりにも自分の中で一体化しているもので(笑)。浅野さんは、ほとんどの場面を1テイクか2テイクしか演じていません。最大でも3テイクです。例外は、ゴールデン街を歩く時のトラッキングショットとか、技術的な理由からテイクを重ねる必要があった場面くらいです。私は、役者がそれでOKだと思えば、OKを出してしまいますから。役者にしてみれば、とてもやりやすいと思ってくれるようです。私としては、役者は最初の1〜2テイクで全てを出すつもりでやってくれていると思っています。
深瀬は、いや、すみません、浅野さんは、ですね(笑)。つい“深瀬”と言ってしまう、あまりにも自分の中で一体化しているもので(笑)。浅野さんは、ほとんどの場面を1テイクか2テイクしか演じていません。最大でも3テイクです。例外は、ゴールデン街を歩く時のトラッキングショットとか、技術的な理由からテイクを重ねる必要があった場面くらいです。私は、役者がそれでOKだと思えば、OKを出してしまいますから。役者にしてみれば、とてもやりやすいと思ってくれるようです。私としては、役者は最初の1〜2テイクで全てを出すつもりでやってくれていると思っています。
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