OUTSIDE IN TOKYO
SAITO HISASHI & KASE HITOMI INTERVIEW

斎藤久志監督&脚本家加瀬仁美『草の響き』インタヴュー

5. 撮っている最中はこの二人はもう一度出会うだろうっていう思いの中でやって
 いるんですけど、編集で繋いでる時には、もう一緒にいれないよなっていう気分
 なんですね、だからそれは両方あるんです(斎藤久志)

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OIT:面会室と言えばあの切り返しのアップはすごいですね。2人は目を合わせない。映画の最初の部分でメインタイトルが出る前に、二人の目が合う切り返しのショットがありますが、その時のお二人の表情も素晴らしいのですが、ここはこの映画最大のアップですよね。
斎藤久志;そうですね。石井さん寄って下さいと言ったらあのサイズになりました。通常の石井さんのアップはバストショットぐらいなんですが、あそこは寄ってますね。僕もびっくりしました。最初引きのサイズで芝居を通して撮っていて、その芝居が良かったので、これでいいかな、と思ったのですが、助監督・齊藤勇起に相談したら「寄っときましょう」と言ったので寄りを撮ったんですけどね(笑)。
OIT:ニューシネマはアンチ・ハッピーエンディングなものが多かったと思うんですけど、これもそうかなって思ったんです。もちろんオープンエンディングにしているのだと思いますが、本音としては、あの二人の関係っていうのはそうなんじゃないかなって思うのですが、どうなんでしょう?
斎藤久志:あの後、どうなっていくかっていうね。
加瀬仁美:私の答えとしてはもちろんあるんですけど。ただ、ラスト近くの純子が車で走っていくシーンで、彼女の行先が港なのか病院なのかどこに向かっているのか分からないように見えたら、この映画は成功かなと思って書いています。
OIT:なるほど。演出上はどうでしたか?
斎藤久志:撮っている最中はこの二人はもう一度出会うだろうっていう思いの中でやっているんですけど、編集で繋いでる時には、もう一緒にいれないよなっていう気分なんですね、だからそれは両方あるんですよ。実は面会室の後、純子がロビーから病院を出るまでをワンカットで撮っているんです。純子の和雄との“決別”みたいなのをね。現場では奈緒に、「ここは『ダークナイト』(2008)のジョーカーだから」と言って(笑)撮っている。その去って行く場面の女側からの決別と男側の女々しさみたいなことっていうことはちょっと思っていました。だけど、そのカットは使ってないです。
OIT:キャスティングに関してお伺いしたのですが、東出さんの出演はどのように決まったのでしょう?
斎藤久志:脚本は作っていましたが、コロナが終息する気配はないし、正直年内は無理かな、と思っていたんですが、菅原さんは佐藤泰志没後30年と函館シネマアイリス25周年が重なる2020年にクランクインすることにこだわっていましたね。ただビックネームは無理だろうと思っていたんですが、菅原さんの情熱が東出昌大を口説いたんだと思います。
OIT:東出さんの交渉は菅原さんが、やられたのですね。
斎藤久志:そうです。メインの大人3人、奈緒、大東駿介も菅原さんが交渉しています。やはりこれだけの俳優が揃えられたのは、佐藤泰志原作、函館と言うここまで4作で作り上げたブランド力は大きいとは思います。奈緒さんはクランイン前に単身函館に行っていたようです。大東さんは出番のない日も含めてずっと函館にいてくれました。東出さんとは「共犯関係でいこう」と話していました。そういった俳優部の想いと、函館にい続けて共有した時間が、映画の力になっていると思いますね。
OIT:若者たち3人のキャスティングは?
斎藤久志:オーディションです。この3人だけキャスティングの細川久美子さんに入ってもらって探してもらいました。ただ彰に関してはスケボーがあったのでAbemaTVの『オオカミちゃんには騙されない』の第6弾に出ていたスケボーが出来るモデルのkayaがいいと加瀬からの進言があったのでオーディションの中に入れてもらいました。それと恵美も最終候補でいい子はいたのですがちょっと決めかねていたところこれも加瀬からMBSテレビの『林先生の初耳学』の中のコーナー「アンミカ先生が教えるパリコレ学2」に出ている三根有葵はどうか言うので追加で呼んでもらい会ってみました。2人ともあまり芝居には興味がない風でした。最終的にはそれが良かったのかもしれません。林裕人も役者経験者でしたが、抜群に普通でした(笑)。まあそういう事ですかね。
加瀬仁美:kayaくんは番組の中で、視聴者投票で誰か1人が脱落させられるって時に出演者みんなで手を繋いで脱落のカウントダウンをするという不気味な回があって、その時1人だけ「こんなの嫌だ」って手を振り解いたんです。それでああ良い子だなと。三根有葵ちゃんどことなく影があるのが良くて、インスタも格好良くてフォローしてて単純にファンでした(笑)。林くんもとっても良かったですね。彼の表情で何度か泣きそうになりました。それからバスケ部のいじめっこ役の山崎竜太郎くんも、すごくハマっていて印象的でした。少年たちがみんな良かった。

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