OUTSIDE IN TOKYO
EVENT REPORT

「ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品特集2010」を観て

@アテネ・フランセ文化センター 上原輝樹
2010.6.3 update


リオ・デ・ジェネイロに行ったのはもう20年も前のことになる。私がニューヨークに留学していた頃の話。アナというブラジル人の友人がいて、お互いに音楽が好きでジャズやブラジル音楽のライブに一緒に行く仲だった。アナは1年程ニューヨークに滞在して、母国ブラジルへ帰ったのだが、共通の友人と私は、ニューヨークからほんの300ドル程度(1990年当時)の飛行機代で行けるし、アナが家に泊めてくれると言うから宿泊費を浮かせる事が出来るということもあって、リオに3泊4日で遊びにいくことにしたのだった。アナは、ブラジルに遊びに来るのに、3泊4日で来るおバカさんはいない、もっと長く居るべきだと主張したが、愚かにも私は、ブラジルでもどこでもその気になればいつでも行ける、ニューヨークを離れるのは4日間程度で充分などと高をくくって、結局彼女の助言を聞き入れなかった。そのリオでの3泊4日は、今でも昨日のように鮮明に憶えている、夢のような4日間だった。それ以来20年間、一度もブラジルを訪れる機会はなく、ブラジルへの郷愁は、年々嵩じるばかり、、、。

それ以降は主にライブやCDを通じてブラジル音楽に触れてきたが、2008年12月、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督特集で快作『マクナイーマ』を観て、久々に強烈なブラジル熱が復活、ほぼ時を同じくして、東京都現代美術館『ネオ・トロピカリア』展でブラジルの現代アートにも触れる機会を得た。また、昨年公開された『ヴィニシウス -愛とボサノヴァの日々-』の、詩人ヴィニシウスの美しくあからさまな人生のポートレイトにも大変感銘を受けた。しかし、それらの体験をさらに凌駕するブラジル体験となったのが、今回の『ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品特集2010』だ。もっとも、2000年には大島渚監督が委員長を務めブラジル映画祭2000でネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督特集が大々的に行われており、この時に既に体験済みの方にとっては、既視感が漂う企画なのかもしれないが、私にとっては、全く以て素晴らしいブラジル体験、映画体験となった。

ここに、今回スクリーンで観る事の出来た幾つかの作品のレビューを掲載する。