ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品特集2010



シネマ・ノーヴォ以来現在に至るまでブラジル映画を牽引してきた、現役最重要映画作家ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の特集上映がアテネ・フランセ文化センターで行われる。「ブラジル映画祭2000--ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス特集」以来10年ぶりの日本での特集上映となる今回も、ドス・サントス監督御大が再来日、「ニュー・ブラジリアン・シネマ」の監修・監訳を務めた鈴木茂氏とのトークショーも予定されている。
2010.5.13 update
Nelson Pereira dos Santos ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
1928年、サン・パウロ州北部に生まれる。サン・パウロ法科大学に学び、弁護士、ジャーナリスト、映画評論家、助監督を経て、リオのスラムを舞台にした 『リオ40度』(56年公開)で長篇監督デビューを飾る。この映画は後に、新しいブラジル映画(シネマ・ノーヴォ)の先駆的作品とみなされるようになった。64年、長年の念願だったグラシリアーノ・ラモス原作『乾いた人生』の映画化を実現。グラウベル・ローシャの『黒い神と白い悪魔』とともに、シネマ・ ノーヴォを代表する作品として国際的に高く評価された。現在も現役の映画監督として活躍。最新作は『Brasília 18%』(2006)。2006年に映画人としてはじめてブラジル文学アカデミーに選出された。

2010年5月21日(金)〜6月3日(木)(10日間/日曜、月曜休館)
会場: アテネ・フランセ文化センター
料金: 一般 1回券=1,200円/3回券=3,000円
アテネ・フランセ文化センター会員=800円 (アテネ・フランセ文化センター会員の方の回数券はありません)
※20分前より開場し、チケットを先着順に販売いたします。
※アテネ・フランセ文化センター会員入会をご希望の方は登録が必要になります。
登録料:一般=1,500円/アテネ・フランセ学生=1,000円(2011年3月まで有効)
お問い合せ:アテネ・フランセ文化センター
      東京都千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F
      TEL 03-3291-4339(13:00-20:00)

主催:アテネ・フランセ文化センター
特別協力:京都外国語大学
後援:駐日ブラジル大使館、ブラジル外務省
協力:京都府京都文化博物館、映画美学校、 山形国際ドキュメンタリー映画祭

上映スケジュール
5月21日(金)




16:00
奇蹟の家(148分)

19:00
人生の道
〜ミリオナリオとジョゼ・リコ
(103分)
5月22日(土)
13:30
リオ40度(100分)


15:40
乾いた人生(105分)

18:00
オグンのお守り
(112分)

5月25日(火)
14:30
主人の館と奴隷小屋
(228分)




19:00
リオ40度(100分)


5月26日(水)
13:40
乾いた人生(105分)


16:00
オグンのお守り
(112分)
18:30
奇蹟の家(148分)


5月27日(木)
14:40
人生の道
〜ミリオナリオとジョゼ・リコ
(103分)
17:00
主人の館と奴隷小屋
(228分)




5月28日(金)



16:40
リオ40度(100分)
19:00
乾いた人生(105分)


5月29日(土)
13:00
監獄の記憶(188分)

16:40
第三の岸辺(98分)
18:30
*トークイベント


6月1日(火)



15:50
第三の岸辺(98分)
18:00
監獄の記憶(188分)


6月2日(水)
13:30
オグンのお守り
(112分)
16:00
奇蹟の家(148分)
19:00
人生の道
〜ミリオナリオとジョゼ・リコ
(103分)
6月3日(木)



15:20
監獄の記憶(188分)
19:00
第三の岸辺(98分)


*トークイベント(入場自由)
参加:ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス(映画作家)、鈴木茂(ブラジル近現代史/東京外国語大学大学院総合国際学研究院 教授)
上映プログラム

『リオ40度』
原題:Rio, 40 Graus
1956年 100分
監督・原作・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/ジェゼ・ヴァラダン、グラウセ・ローシャ、ロベルト・バタリン

灼熱のリオ。カブスの丘のスラムに暮らす5人のピーナッツ売り少年を中心に、金と欲の力関係に翻弄される人間たちの姿を縦横無尽に交錯させた、都市生活者のタペストリー。ネオレアリスモなどに影響を受けつつ、政治状況への積極的な加担と連帯への希望を表明したこの作品は、新しいブラジル映画(シネマ・ノーヴォ)の到来を告げることになった。

『リオ40度』レビュー 2010.6.3 update
『乾いた人生』
原題:Vidas Secas
1963年 105分
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/アッチラ・イオリオ、マリア・リベイロ、オルランド・マセード

干ばつのために難民生活を強いられたファビアーノ一家。ようやく見つけた農場での生活も、権力者の搾取と横暴からは逃れられない。そして、新たな干ばつが一家をふたたび「地獄」へと突き落とした。ブラジル東北部(ノルデスチ)の内陸に生きる零細農民の苛酷な現実を、地を這うような目線で描き、シネマ・ノーヴォの評価を内外に決定づけた傑作。

『乾いた人生』レビュー 2010.6.3 update
『オグンのお守り』
原題:O Amuleto de Ogum
1975年 112分
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/ジョフレ・ソアレス、アネシー・ローシャ、ネイ・サンターナ

民間信仰ウンバンダ教の神オグンから不死の肉体を授かったガブリエル。この不死身の主人公を中心に繰り広げられる犯罪組織や政治家をまきこんだ抗争劇が、民衆の信仰を異物化し、貧困と暴力を恒常化させるブラジル社会の実態を暴き出していく。スピーディな展開の活劇という形を借りて、大衆との精神的な共犯関係を模索したペレイラ・ドス・サントスの新境地。

『オグンのお守り』レビュー 2010.6.3 update
『奇蹟の家』
原題:Tenda dos Milagres
1977年 148分
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/ウーゴ・カルヴァナ、ソニア・ディアス、アネシー・ローシャ

今世紀初頭、人種の混交こそ民主的な社会を作ると主張して、バイア州の知識人や権力者を震撼させた混血の学者ペドロ・アルカンジョ。この忘れられた先覚者をめぐって、過去と現在、白人と黒人、西洋とブラジルといった複数の視線がぶつかり合う。人種にまつわるブラジル人の深層心理にメスを入れた、ジョルジェ・アマード原作による衝撃作。

『奇蹟の家』レビュー 2010.6.3 update
『人生の道〜ミリオナリオとジョゼ・リコ』
原題:Estrada da Vida- Milionário e José Rico
1981年 103分
監督/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/ロメオ・J・モトス、ジョゼ・A・サントス、ナディア・リピ

ブラジル中央部(セルタネージャ)出身の人気デュオ、ミリオナリオ(百万長者)とジョゼ・リコ(金持ち)を主役に迎えた音楽映画。二人がミュージシャンとして人気を得るまでの話を軸に、彼らの音楽が生まれ、歌われ、聴かれる状況を、寄り添うような眼差しで捉えていく。『オグンのお守り』に始まる「民衆映画」の延長線上にある作品。
『監獄の記憶』
原題:Memórias do Cárcere
1981年 188分
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/カルロス・ヴェレーザ、グロリア・ピレス、ジョフレ・ソアレス

ヴァルガス独裁政権による共産主義者弾圧のさなか、作家グラシリアーノ・ラモスは、政治犯として監獄に送られる。そこで彼が見たものは、植民地主義の残滓と支配者による暴力、そして脆弱なエリートというブラジルの現実そのものだった。近代という時代の苦難と矛盾を背負って生きる作家の姿を大きなスケールで描いた、映画による知識人論の最高峰。
『第三の岸辺』
原題:A Terceira Margem do Rio
1994年 98分
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
出演/イラ・サン・パウロ、ソニヤ・サウリン、バルバラ・ブラント

静かな川べりの一軒家に暮らすリオ・ジョルジ一家。幼い頃に川の彼方へと姿を消した父、牛に導かれ出会った美しい妻、不思議な念力を備えた一人娘。しかし、故郷を捨てブラジリアへ出た一家には、新たな苦難と喧騒の嵐が待ち受けていた。奇蹟への信仰と畏怖、生と死の不条理な輪廻を通して、ブラジル民衆の宗教心の内奥へと踏み込んだ野心作。

『第三の岸辺』レビュー 2010.6.3 update
『主人の館と奴隷小屋』
原題:Casa-Grande e Senzala
2001年 228分 ※ビデオ作品
監督/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
第1部「ジルベルト・フレイレ、現代のカブラル」(57分)
第2部「アクーニャ、ブラジル的家族の母」(57分)
第3部「ポルトガル人、熱帯の植民地」(56分)
第4部「ブラジル人の性生活と家族関係における黒人奴隷」(58分)

人類学者ジルベルト・フレイレが執筆した同名の著書を、4回連続のテレビ番組として映像化。第1 部は、フレイレの友人であった作家エドゾン・ネリー・ダ・フォンセカに扮した教授が、この著書の執筆過程と出版当時の反響を語る。第2部では、教授と学生とが、インディオとヨーロッパ人の出会いについて議論する。第3部は、元々様々な人種の影響下にあったと推察される植民地のルーツがポルトガル語で語られる。第4部では、主人と奴隷の生活描写や性的関係、サディズム等が論じられる。




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