OUTSIDE IN TOKYO
GABE KLINGER INTERVIEW

ゲイブ・クリンガー『ポルト』インタヴュー

5. 映画というのはこういう映画にしようとしたからって
 必ずそうなるものじゃない。自然な流れでできていくものだ。

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OIT:ラリーはハリウッドの仕事も経験豊富だよね。
GK:そこがよかった。この映画はアート系からハリウッド映画に至るまで両方の影響を受けていると思う。そしてラリーは両方でやって来た。アーティスティックで小規模な映画も、メジャースタジオの映画でエディ・マーフィーが出るような規模の映画でも脚本を書いてきた。それがいいんだ。両方のキャパシティと感受性を持っていて、エンタテインメント性を持ちながらドラマチックにもでき、より一般的な映画の娯楽性も持ち込める。そうして様々な要素を爆発させてくれた。新しい可能性も開いてくれて。彼は宝物のような存在だ。そういう人はあまりいない。ほとんどがハリウッドだけかアート系だけって感じだからね。その間をとり持てる人がなかなかいないんだ。

OIT:そんな間というのも何かキーワードになっている気もするんです。
GK:映画というのはこういう映画にしようとしたからって必ずそうなるものじゃない。自然な流れでできていくものだ。どの映画もそういう意味ではユニークだ。クッキー型のようなハリウッドのスーパーヒーロー映画でも、それぞれの映画の言語を持っているはずなんだ。他の映画とは異なるコミュニケーションをとっている。こういう映画を作ろう。コメディやホラーを作ろうと思っても、それぞれが独自の言語で表現される。ジョン・カーペンターが『リオ・ブラボー』(59)のような映画を作ろうとして、『ジョン・カーペンターの要塞警察』(76)を作ったように。結局『リオ・ブラボー』ではないけど、そこには何かある。『遊星からの物体X』(82)の時もそうで、ハワード・ホークス的な魂があるけど、ジョン・カーペンター作品以外の何モノでもない。インスピレーションを受けて、それを別のものに昇華させることはできるんだ。

OIT:それは面白いですね。それに役者たちの反応の仕方を見ているとカサヴェテスを思い浮かべます。
GK:彼は最高だね。いつもカサヴェテスのことが僕の頭にあるから無理もない(笑)。それとモーリス・ピアラ。彼らの演技へのアプローチはものすごい。ジャック・リヴェット、そして、少しだけゴダールも。影響を受けたり、好きな映画監督はたくさんいるけど、ドラマ的な性格においては、カサヴェテスの微妙さが好きだ。人が叫んでいて、何が起きているかはっきりわからない、粗くて洗練されていなくても、そう設計されているものなんだ。

OIT:監督として、何か予定外のことが起きたり、何か光を放つような瞬間に身を任せることはありますか?
GK:そこに到達するためにはある方法というか、チャンスがあるよね。一つ目のチャンスは脚本にあって、二つ目が、役者と一緒にシーン作りをしている時、そして三つ目が撮影の瞬間だ。一晩待って何か違うことを試せる贅沢が許されたり、シーンによってより多くの時間を割く必要があったりする時にチャンスが訪れる。例えばカフェのシーンで、カメラが往ったり来たりする瞬間、あのシーンはワンショットのために一日、12時間を掛けて撮った。カフェ全体に照明を当てなければならなくて、エキストラのコーディネートもしなければならない。ドリーも入れて、その動きのリハーサルもしなければならなかった。時間がかかるし、うまくいく確証がなければならない。それで12テイクやって、使ったのは12テイク目だ。最後のチャンスで、朝6時に太陽が昇り始めていて(笑)、夜の光を失うところだから終わらせるしかない。それでも完璧にするために時間をかけたんだ。でも逆に、ジェイクが霧の中を歩くシーンはワンテイクだけど、あの時はオフ日で、クルーの人数も少なくて5人ほどで、ちょっと散歩しようかと言って出たら、いい感じの坂があったので、やってみようってことで、2、3回カメラを回して、ホテルに戻って休憩した。それだけカジュアルに撮ったシーンもあれば、正確さをきたして撮影したシーンもあるんだ。

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