OUTSIDE IN TOKYO
GABE KLINGER INTERVIEW

ジム・ジャームッシュが製作総指揮。そう聞けば必然的に見たくなるもの。商業的には簡単に動かない、そんなジャームッシュの信頼を勝ち得たのが処女作『Double Play: James Benning and Richard Linklater』(13)から2作目だが、この規模で出すのは初めてというゲイブ・クリンガー監督の『ポルト』。どこかボヘミアンでインディーな雰囲気を醸し出しながらポルトガルの第二の都市という渋い場所を選んだことにもセンスを感じる。そして、その地で映画を撮ってきたポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラの街でもある。映画に入り込めない部分も多少あったが、この人について調べてみると、明らかにシネフィル的な背景が見え隠れし、そこにもジャームッシュが信頼を置いたのかもしれないし、映画の中の様々なレファレンスについて聞いて見たくなる。彼自身、映画評論家として活動し、映画祭のプログラミングも行ってきたという。しかも、ブラジル人である。興味を覚えないわけがない。ところが、監督は国籍こそブラジル在住だが、アメリカで育ち、そのカルチャーと言葉に精通している。男と女がポルトの街で出会い、一緒に時間を過ごす、そんなシンプルなストーリーだが、様々な時間が重なり合い、それを異なるフィルムのフォーマットで表現するということも試みている。そんな監督に話を聞いてみた。

1. ロッテルダム映画祭では、ブラジル映画の特集上映を企画した

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8



OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):今の拠点はどこですか?
ゲイブ・クリンガー(以降GK):シカゴだよ。自宅があるし、住むのにいい場所で、ルーツもあれば繋がりも多いから。

OIT:出身はブラジルですか?
GK:そう、サンパウロ。色々な場所へ引っ越し、ティーンの頃にスペインに移住してから、またシカゴに戻って、ニューヨークにも住んでいた。ロスにもパリにもいた。基本的にプロジェクトに導かれて行くことが多いね。

OIT:ブラジルはあなたにとってどんな場所?
GK:とても強い繋がりを感じるし、家族のほとんどは今もいて、ブラジル映画は大好きだ。これまでブラジル映画のプロジェクトにも関わってきた。2012年のロッテルダム映画祭では、ブラジル映画の特集上映を企画したんだけど、とても風変わりでブラジル映画のカルチャーを体現しているものを集めるために時間をかけてリサーチしたんだ。

OIT:映画祭のプログラミングもしてるんだね。
GK:そう、映画祭やシネマテークの仕事をしたり、批評家としても書いてきた。特に書くのは好きで、映画の美学や歴史に関するものが多い。まだやるべきことはたくさんある。放置したくないから、人々の記憶に残すためにやらなければいけない重要な仕事はまだまだある。忘れられた歴史を思い出してもらったり、賞賛を受けるべき映画がきちんと評価されたり。それも仕事のうちさ。

OIT:ブラジル映画は昔から見てきたものなの?
GK:いや、後から発見したものさ。ほとんどが初めてみるものだった。1、2本だけ見たことがあったけど、初めてみる時の喜び、発見するのは楽しい。忘れられた映画や映画作家を発見する時、その魅力の片鱗はすぐに理解できる。

『ポルト』
英題:PORTO

9月30日(土)より新宿武蔵野館にてロードショー

監督・脚本・製作:ゲイブ・クリンガー
共同脚本:ラリー・グロス
製作総指揮:ジム・ジャームッシュ
撮影:ワイアット・ガーフィールド
出演:アントン・イェルチン、ルシー・ルーカス、フランソワーズ・ルブラン

©2016 Bando a Parte - Double Play Films - Gladys Glover - Madants

2016年/ポルトガル、フランス、アメリカ、ポーランド/カラー/76分/ステレオ
配給:コピアポア・フィルム

『ポルト』
オフィシャルサイト
http://mermaidfilms.co.jp/porto/
1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8    次ページ→