OUTSIDE IN TOKYO
MIYAKE SHO INTERVIEW

三宅唱『きみの鳥はうたえる』インタヴュー

6. 同じ世界を違う窓から見るような、そんなつもりで、
 小説と映画の関係を捉えたいと考えていました

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OIT:何曲か撮った訳じゃなくて、撮ったのは一曲?
三宅唱:撮影はこの曲だけです。

OIT:フルフレーズ、2番か3番まである中の1番くらいまでは全部歌ってるんですか?
三宅唱:最後まで歌ってもらいました。

OIT:じゃああの二、三倍撮っていると。
三宅唱:曲が終わってシーンとなるまで撮ってますね。

OIT:それはどこかで一度見せていただかないといけませんね、相当良いものが写っているのではないでしょうか。
三宅唱:JASRACと再度やりとりですねえ(笑)。DVD特典で言えば、クラブの場面だけで短編を作れそう。いい瞬間が他にもいっぱいあるんで。

OIT:クラブは夜ずっと回してたんですか?
三宅唱:具体的に言うと、17時に入って、その時点でHi’Specに曲をかけはじめてもらって、音の中で各部のセッティングや打ち合わせをして、19時半頃にお客さん役の方たちにも入ってきてもらい、それから撮影が始まって、23時には終わりました。ざっと3時間だったと思います。

OIT:その間ずっとパフォーマンスやってる訳じゃなくて、DJの時間があってパフォーマンス自体は1時間とか?
三宅唱:劇中だとOMSBは2曲ライブしてるんですけど、ライブ自体は何回かやってもらっています。まずライブを撮って、その後バーカウンターの場面を撮って、フロアの場面を撮って、もう一回最後にライブを撮ったかな。でも、その都度音を止めて休んでもらってっていうことではなくて、ずっとクラブは運営している中で、Hi’Specの音は止まらずに。

OIT:通常営業してた?
三宅唱:いやいや、通常営業してるかのように。お酒も出る状態にしてもらって。音が止んで素に戻るようなことはない、という意味です。もちろんカメラはカット毎に回ったり止まったりしてますが、活劇シーンなので、役者もスタッフも本番体制がずっと続いているような撮影現場でした。

OIT:だからさすがにちゃんと撮れてるかなって気になったと。
三宅唱:ですね。

OIT:あと、染谷さんと渡辺真起子さんのシーンも本当に素晴らしいんですね、特に原作を読んだ後に見ますと、すごく泣けてくる、渡辺さんって本当に素晴らしい俳優だなと。
三宅唱:そうですね。小説では、母は語られるだけで姿は一度も現さないんですけど、にもかかわらず母の「イメージ」が強烈である。映画にする時は、静雄と母の関係を捉えるためにも具体的な「存在」として登場した方がいいだろうと考えて、その時点で渡辺真起子さんと一緒にこの母を作ろうって僕の中では決めていましたね。

OIT:原作だと手紙がおばさん経由で登場しますが、こういう場面も映画独自のもので、原作のエッセンスが生きたまま、三宅唱の映画として完成している。あと、原作の小説の中だとどうしようもない奴として描かれる登場人物が一人、二人いるじゃないですか、それも映画では救っていますね。
三宅唱:そう感じていただけるのは嬉しいですね。小説があって映画があるという形では僕は捉えていなくて、極端な言い方に聞こえるかもしれませんが、まず、あの世界がある、彼らがいる。それが、小説のアングルからだとこう見える。映画のアングルではこう見える。アングルが変わるから違う姿が見えるけど、同じ世界を違う窓から見るような、そんなつもりで、小説と映画の関係を捉えたいと考えていました。


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