OUTSIDE IN TOKYO
MIYAZAKI DAISUKE INTERVIEW

宮崎大祐『TOURISM』インタヴュー

3. 越境がひとつのテーマだったので、全てがある種一体化しつつ
 個が立っていくというイメージでやっていました

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OIT:その時はまだ子供のナレーションとかなかった?
宮崎大祐:美術展の段階で子供のナレーションは流れていました。
OIT:あ、そうなんですね。
宮崎大祐:はい、長編映画としても美術作品としても流れてました。
OIT:あのナレーションは面白いですよね、あの語りは映画的な一つの見せ方かなと思いますけど、現代美術の映像の中でも同じなのですね。
宮崎大祐:そうですね、一つの展示が、郊外に幽閉されたっていう、敷居とか仕切りとか、線引きみたいなものを強調した展示だったんですね、そこから出られないという状況で、性差とか都市と郊外とか、そういう線引きを強調した展示だったから、逆にそういう認証を全部超越したような映像にするっていうイメージを持っていました。そこで、敢えて誰だかよく分からない子供の声を入れるとか、オープニングショットのどういう関係性かよく分からないけど3人で寝てるとか、そういうのを意識的に入れていったところがありますね。
OIT:オープニングショットで、足が何本も出てきて、最初は2人なのかなと思ったら、実はもう1人いるみたいなことになってましたね。
宮崎大祐:そうですね、越境がひとつのテーマだったので、普通はやらないと思いますけど、全てがある種一体化しつつ個が立っていくというイメージでやっていました、それは展示自体もそうです。
OIT:音楽も、映像インスタレーションの時点でついていたんですか?
宮崎大祐:音楽はついてるところもあったんですけど、そんなに精度は高くなくて、被せられるところだけちょっと被せたりっていう感じでした。正直、美術展で一番のネックはステレオがよくなかったことで、そのことは美術館側からも事前に言われていたんですけど、その後、録音の高田(伸也)さんのスタジオに行ったりして、普通に見れるレベルには調整して頂きました。
OIT:脚本は作られたのですか?
宮崎大祐:役者に渡したのはプロット的なものだったんですけど、日によっては結構具体的に渡すこともありました。僕の中では人に見せないノートにかなり具体的には書かれていて、っていう形で今回は進行しました。僕はシナリオをがっちり書きたいタイプだったんですけど、今回は自分は何をやりたいか分かってるけど、役者はそこまで具体的に分かってないっていうのを敢えてやってみようと思って臨んだんです。よくフランスの監督がやる方法ですね。
OIT:ありますよね、そういう方法論が。
宮崎大祐:そういうのをちょっとやってみようかなって、チャレンジではありましたけど、非常にしっくりきたのでまたやってみたいという気はしました。
OIT:元々アメリカ映画原理主義者だってご自分で言われているので、脚本もしっかり書かれるのかなと思っていました。
宮崎大祐:そうですね、元来、アメリカ映画的な、構成の山が2つあって、厳密には4つあってみたいなことをやってしまう人間なんですが、今回はそういったことを一回更にして、もちろんかつての経験を踏まえた上でやってみようというのがありました。だから、スタッフやキャストの皆さんは、本当にその場に観光に行って、その場で起きていることに反応するみたいなことになっていたとは思うんですけど、自分の中では結構厳密に決めていたりもしつつ、進めていきましたね。
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