OUTSIDE IN TOKYO
MIYAZAKI DAISUKE INTERVIEW

宮崎大祐『TOURISM』インタヴュー

7. ペドロ・コスタがスタジオに来て、
 これを世界中にばら撒けと言って去って行った(笑)

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OIT:ホリエモンみたいな人がシンガポール最高とか言ってるのは全部そっちのジェントリフィケーションされてる方だけの話ですよね。政治は逆にソフトな独裁政治みたいな感じ、しかも今の日本政府はそれを目指してる感じすらある。
宮崎大祐:まさにそうですね、いつも一緒に仕事をさせていただいてるカメラマンの芦澤明子さんが、縁があって『大和(カリフォルニア)』を観てくださったのもあって、去年シンガポール映画祭の審査員に行かれたんですけど、これは言っていいのか分からないですけど、本当に“微笑みの北朝鮮”ですねって(笑)仰って、本当にその通りなんですよ、でも日本もそうなんで、兄弟国家として一緒に頑張れるんじゃないですかみたいな皮肉を言ってました。
OIT:日本批判というよりは国家の在り方に対する相対的な視点っていうのがこの映画の中に当然あるわけですよね。
宮崎大祐:と思いますね、だからやっぱりその境界を超えてくっていうテーマを打ち建てるならば、やはり最初に考えるべきは国境なのかなと、判りやすく人種とか、性差なのかなっていうのはありました。ただその狙いがちょっと、ある種上手くいってなかったというか、上手くいき過ぎたっていうのは、最初に(カラー)グレーディングして色を変える前は日本の郊外とシンガポールの景色が西洋の友達に見せたら何が違うのか分からない、国が変わったのが全然分からなかったからギャップは感じられないって言われてしまった。そこをゴンサロ(・フェレイラ)が、グレーディングで上手くシンガポールと日本を分けてくれたので判りやすくはなったんですけど、それも自分にとっては凄く意外な指摘で、えっ、どう見ても違うじゃんと思ってたんですけど、彼らにとっては全く一緒に見えるから旅してる感じがしない、なんかインパクトがないって言われたんです。
OIT:カラー・コレクションを相当されたっていうことで素晴らしい仕上がりになっていると思うんですけど、ゴンサロという方は、ペドロ・コスタともやっている人なんですよね?
宮崎大祐:はい、ゴンサロ・フェレイラっていう人で、ペドロとフィルムの頃からずっとやってる、まだ凄く若いカラリストなんです。最初は、やってくれないだろうなーと思いつつも、見せてみたらって紹介してくれた友達に言われたので見せたら、面白いって言ってくれた、撮影デバイスがいっぱい入ってるのも、彼的にはチャレンジで面白いっていうことだったみたいです。
OIT:なるほど、作品を見て面白いと思ったからやってくれたと。
宮崎大祐:そうです、それ以降ずっと今に至り、次の作品もやってくださってるんですけど、凄いですね、彼は。最新作は彼が作業をしている横でペドロが見てたり、肝が縮む思いだったんですけど。
OIT:それはリスボンで、ですか?
宮崎大祐:いや、僕は行ってなくて、オンラインでやりました。細かく送ってくれた映像を、もっとこういう感じって指示を電話で出したり、WhatsAppってアプリでもうちょっとこんな感じって指示を出して変えてもらってしてやり取りしたんです。
OIT:それを、ペドロも見てるっていうのが何とも言えませんね。
宮崎大祐:新作もゴンサロにグレーディングしてもらったんですけど、ペドロがスタジオに来て、最初から最後までずっと見て、これを世界中にばら撒け、と言って去って行ったよって(笑)。
OIT:映画製作の仕方がなんかもう音楽製作みたいなやり方ですよね。
宮崎大祐:多分、映画のテーマもそうですけど、今までのやり方を完全に壊して国境を越えてやっていくっていう意味では、今回のゴンサロとのやりとりは非常に面白かったですし、音楽を作るTHE Are(アール)とのやり取りも整音していただく高田さんとも結構オンラインで色々進めていったので、もう根本的に映画作りが変わっているなっていう印象を受けました。
OIT:かなりデスクトップで作られているという感覚。
宮崎大祐:それもあるんですけど、たまに映画祭とかでかけていただいた時に大きなスクリーンで自分で見て、ここをちょっといじりたいと彼らに連絡して、ここのカットだけ変えてくださいとかっていう作業をやって、漸くこの公開版になったっていう感じはあります。
OIT:なるほど、デスクトップで見ただけじゃ分からないところもあると。
宮崎大祐:はい、でも今ってもうNetflixとかもそうですけど、デスクトップで見る方も多いし、そこからテレビでご覧になる方も劇場でご覧になる方もいて、色々なバリエーションがあると思うんですけど、やっぱり自分としては劇場で見るバージョンに近付けたかったので、映画祭とか試写の機会を使わせていただいて、調整しながら今のバージョンに辿り着きました。
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