OUTSIDE IN TOKYO
SUZUKI TAKUJI INTERVIEW

鈴木卓爾『嵐電』インタヴュー

3. 京都の街って宇宙をそのまま転写させたみたいに感じられる地名が多かったり、
 風水的にもそういう風に設計されていたりする

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OIT:それは観ていてちょっと感じました。鈴木卓爾監督も、井浦新演じる衛星のように、京都に入ってきて、ひょっとして線路沿いのああいうアパートに暮らして、あの小さい机もあったりしたのかなとか思いながら。
鈴木卓爾:ああ、そうですね、何もなくてだだっ広い中で寝たり。凄く直近にあったことを映画にしていく、再構成しているみたいなことはありますね。それと西田さんの方から古い嵐電の8ミリがあるっていう話が出たこともあって、古い嵐電の姿を集めていきたいなと思っていました。それを北白川派の運動の要素で地域の人達を巻き込む形で、大学で言うとそれはつまり産学連携ということになりますが、地域の人達にとってのアートを通じた文化運動として、街の見え方や感じ方を、ちょっと視点を変えてみることを提案する、それが学生の側も地域の人達も活性化できるということになれば面白いよねって、やれたらやろうねっていうのがありました。そうするとその鍵になるのが、古い嵐電を撮っている8ミリフィルムを嵐電沿線に住んでいる方々はまだ保存しているのかもしれないなと思った時に、ちょっと集めてみようと思ったりしました。自分の側の事情を映画にしていかないと書けないっていう視点とは別に、今度はもうちょっと別のマクロな視点で嵐電の街を俯瞰して見るために必要な材料が色々と必要であるなと。西田さんの方から朧げに出て来る色々なキーワードとか宮沢賢治とか、そういうものを貰ってその条件で組み上げていくという感じでしたね。
OIT:登場人物の名前が面白いですよね、衛星とか南天とか子午線とか、どこからきたのかなと思ったんですけど。
鈴木卓爾:自分は鈴木っていう平凡な苗字に生まれたので、変わった苗字に憧れてはいたなと思うんだけど、平凡な名前を登場人物につけるということは矢口(史靖)監督がもうやっているので、同じことをやりたくないなとずっと尾を引いていたのは事実です。あとは、元々私の作る映画の特性がちょっと変わった映画だったりするので、名前が変わってる方が分かりやすいかなと思ったのと、京都の街って宇宙をそのまま転写させたみたいに感じられる地名が多かったり、風水的にもそういう風に設計されていたりするので、ここで映画を撮るにあたって登場人物もまた地図のように配置されている、そんな風にマッピングして作っているので、歩くこともそうだけど、本当にマッピングしないと映画が撮れない、それで願掛けみたいな意味もあって移動する名前だったり、方角の名前だったり、天体に近い名前をつけていたり、“暦文”(渡邉結花)っていう登場人物もいるんですけど、そうやって本当に3Dの地図を作るみたいな感じで人物配置は考えました。
OIT:金井浩人さんが演じた人物は“フウウ”という名前でしたっけ?
鈴木卓爾:譜雨(ふう)ちゃん。うちの叔父さんに“ふうちゃん”っていうあだ名の叔父がいたんですよ、
OIT:そこからきてるんですか?
鈴木卓爾:父の弟ですね。彼は別に“ふう”って名前じゃなかったんですけど、 “ふうちゃん”って呼ばれてた。あと、友部正人さんの「大阪へやって来た」っていうアルバムがあって、そのアルバムか、それではないアルバムに「ふうさん」っていう歌があるんです。僕は何となく旅人で今まで東京にいたけれど、京都という時間を凄く過ごし、どんな縁でか住むようになって、その友部さんの「大阪へやって来た」の中だったか、別のアルバムだったか知らないけれど、「ふうさん」っていう曲が思い出されて、それで“譜雨”ってつけたんです。それに俳優が“ふうさん”って言った時に、何というか風来坊だよねっていう、それもあるんだと思うんですよ。それに譜面の譜と雨っていうのをくっつけて、きっとこの名前をつけたお父さんとかお母さんって変わってる人だろう、その子供が俳優になってるぐらいな感じかなと。雨っていう文字が良いなと思ったので、暗くていいなと思ってつけました。


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