OUTSIDE IN TOKYO
SUZUKI TAKUJI INTERVIEW

鈴木卓爾『嵐電』インタヴュー

8. 夫婦や男女のやり取りを会話にするとしたら、やっぱり齟齬とかすれ違い続けるとか、
 全く噛み合わないとか、そういうことしかないかなと

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OIT:ちょっと大西さんの話に戻りまして、嘉子と譜雨ちゃん、二人のドラマというのがありますよね、その中で逆ギレというか、本音を嘉子がぶつけるところがあるじゃないですか、そこも素晴らしかった。
鈴木卓爾:あれって想像つきました?
OIT:いや、つきませんでした、まさかそういうことになるとはと驚かされました。「私は自分に自信がないから人といるのが苦手です」とか、あの台詞は名台詞じゃないでしょうか。
鈴木卓爾:あの台詞は、言える人ってそんなにいないかもっていうか、もう完全なる自分宣言を言ってる訳なんだけど。今回の台詞も、前からそうなんですけど、基本的に言い方は台本を渡す段階でも何も指示してないんです。
OIT:台詞自体は脚本通りですか?
鈴木卓爾:通り。「・・・」もつけてなくて、「!」も無いんです。だから言い方は俳優さんにお任せするということで済ませてますね。それを京都弁の人達に集まって頂いて方言に書き換えていくっていうことはしていますが、ちゃんと台詞になっていますよね。でも今回は久々に台本書いたなっていう感覚もあるんです、私自身。
OIT:そうですよね、『ジョギング渡り鳥』とか『ゾンからのメッセージ』はちょっと違いましたから。
鈴木卓爾:そういう意味ではクレジット的には『ゲゲゲの女房』(10)以来なので、本当に久々です。ただやっぱり夫婦のやり取りとか、あるいは男と女のやり取りを言葉にする、しかもそれが物語というか脚本になるとしたら、きっとその間にあるものは、親密さもあるかもしれないですけど、やっぱり齟齬とかすれ違い続けるとか、全く噛み合わないとか、そういうことしかないかなと思っていて。それは『ジョギング渡り鳥』、『ゾンからのメッセージ』の時は俳優達の台詞であったり、古沢さんの脚本であったりしたので、僕が書くと今回のように、こうなるかなっていうのはあるのかなと思います。僕が一回家で芝居してから書いてるんですけど、その想像を超えられるだろうか?っていうことがやっぱり撮影になっていく。
OIT:想像は超えたんですか?
鈴木卓爾:ああ、もう大西さんにやってもらった段階で、うん、ここまで越えるとは思ってなかったというほどに、ちょっと驚いていて。大西礼芳さんにはジョン・カサヴェテスの話をしたんですよ、漸く仕事が一緒に出来るということもあり。元々彼女はうちの俳優コースの卒業生だったんですけど、私の時期にはもう卒業していましたね。彼女達の卒業展のゲストで呼んでもらって一緒にトークをしたぐらいの時に、彼女の出ていた学生時代の作品をいくつか観ていたというぐらいなんですが、かなりリズムが面白い人で、映画撮影をすることでその演技は意味を持つということの上に成り立っているお芝居を出来る人だっていうのがその時分かった。卒業されて何年か経ってプロの仕事をされてきて、やっぱり更にパワーアップしていて、尚且つ今回の作り方が、凄く芝居を大事にしたいっていうことを元に映画を作らせてもらっていたので、尚更ですね。大西さんの準備が素晴らしくて、現場に入る時は、ほとんど出来てたりするので、いくつか話をするだけでOKみたいな感じでしたよ。
OIT:テイクはそんなに重ねてないですか?
鈴木卓爾:重ねてないです。2回ぐらい撮ってるかもしれないという程度で、それでも1回目の方が良かったなって思って1回目を使っているということが多いんじゃないかな。リハーサルすらしてない時もあります。リハ無しでやる時は、話をして、この場面の目的みたいなことを理解してもらったら、あとはドン!みたいな感じでやってもらってますね。


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