OUTSIDE IN TOKYO
SUZUKI TAKUJI INTERVIEW

鈴木卓爾『嵐電』インタヴュー

12. 京都でドキュメンタリーを撮る、それはもう心に決めていることで、どうしてもやりたいことなんです、
  すぐにもやりたいんだけど、やる余裕が全くなくて焦ってるんです

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OIT:この後はどのような作品を予定されていますか?
鈴木卓爾:ドキュメンタリーを一個撮る予定がありますが、具体的にはこれがひと段落しないと動けない、自分の体でやるからなぁと思っているので。
OIT:ドキュメンタリーって今までやってます?
鈴木卓爾:やってると言えばやってるし、やってないと言えばやってないんですが、僕一番最初に実写でぴあフィルムフェスティバル88 年のアワードで審査員特別賞もらった、上映してもらった作品が『虹』っていう映画で、それドキュメンタリーと言えばドキュメンタリーなんだけど、自撮り映画なんですよ。それがドキュメンタリーでないと言えばドキュメンタリーではないし、とにかくそういう意味ではドラマでもないし、ドキュメンタリーでもないっていう。エセのフィクションというか、自分についての映画だったので、ただそういったものではなくて、ちゃんと他者にカメラを向けたものとして、それはすぐやりたいんですけど、なかなか忙しくて出来ない。
OIT:京都ではなくて?
鈴木卓爾:京都です、それだけは伝えておきます、あとはちょっと言えませんが。それはもう心に決めていることで、どうしてもやりたいことなんです、すぐにもやりたいんだけど、やる余裕が全くなくて焦ってるんです。
OIT:今日、演習の様子を見たこともあって思いましたが、大学で授業をやりながら映画を作り続けるって、やっぱり大変そうですね。
鈴木卓爾:しんどいですね。今日も実習の授業やってて、凄く日常的に学生を前に映画のことや演技のことを考え続けてるのは確かで、どこに自分の定点を置くのかっていうことがぶれるばかりというか、そういう思いですよね。定まって成熟していくものじゃないねーっていう感じは凄くしますよ。定まって成熟させていくっていうことの難しさとか不可能さっていうのが映画にはそもそも備わっているような気がしちゃう。
OIT:逆に言うと常に鍛えられて進化しているのかもしれない。
鈴木卓爾:そう思っていただいて、がんがん私に仕事をください、こなせるかどうかはともかく(笑)。これがですね、本当に映画と学校の業務と一緒にやると死にそうになるというか。
OIT:学校の業務は実習ばかりじゃないですからね。
鈴木卓爾:学校の業務は運営もあるしっていうのはあって、それをやってるんですけど、やっぱり学生はみんな若くて僕達にはない元気さがあるじゃないですか?そこにも腹立ちながら、今日も授業でみんなが生き生きしだすと凄く見ていて面白いんですよね。重たい石を授業でみんなにのっけるんですよ、カメラ前でみんなが見ている前で何にもしないでいられるか、よーい、ハイ、みたいな感じで。何かしないでね、面白いことしないでね、みたいな感じでやってるんですけど。自分にとって役者、芝居、演技とか映画とかっていうことは学生に伝える時に凄い考えちゃうじゃないですか、ちゃんと伝えられるんだろうかとか。そもそも体系が出来てないですからね、理論化出来てなかったりするから実習になるんですよね。それを伝えることが出来るものが“学問”だとすると、果たして学問と言えるのかって凄く怪しいところではある。だって、大学ですからみんな全てに同じことを伝えられるはずがない訳で、しかもそれに皆さんが等しく興味のあるものとしてはまってもらえるかどうかも怪しい訳です。と言いつつ遡ってみると、僕自身が大学生の時代に映画をどこまで面白いと思っていたのかは怪しいんですよ。「リュミエール」とか買ってきて読むんですけど、蓮實さんの文章を読んでみても、何を言ってるのかちんぷんかんぷんな訳ですよ。小津安二郎の映画を観てもまだ全然分かんなかったし、面白いと思わなかったですね、飽きちゃうんですよね、最初は面白いと思うんだけど。小津映画が面白いとか思ってハッとしたのは30歳過ぎてからだよなぁと思ったり、ゴダールはでも面白かったですよね、なんか知らないけど飽きさせなかったりとかするし、音楽なんでしょうね、きっと。
OIT:確かにゴダールは若い時に観ても面白かったです。
鈴木卓爾:中毒性、熱中性があるとか、真似したくなるというか。そう、小津安二郎は真似したくならない。ジャームッシュは凄く真似したくなる、時代ごとにそういう真似しやすそうな人は出て来ますよね。
OIT:そういう人にはポップさがありますよね。
鈴木卓爾:ホン・サンスとかそうかもしれないですけど、今、大学生はみんなホン・サンスとかを真似したくなるみたい、筆頭ですね。


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