OUTSIDE IN TOKYO ENGLISH
2011 BEST 10 FILMS

2012.1.13 update
イーデン・コーキル(ジャパン・タイムズ編集局学芸部長)

小倉聖子(VALERIA/映画宣伝パブリシスト)

鍛冶紀子(OUTSIDE IN TOKYO)

江口研一(OUTSIDE IN TOKYO)

上原輝樹(OUTSIDE IN TOKYO)

日本公開新作映画ベスト10
イーデン・コーキル
1.『英国王のスピーチ』トム・フーパー
2.『ブラック・スワン』ダーレン・アレノフスキー
3.『10000万年後の安全』マイケル・マドセン
4.『トゥルー・グリット』コーエン兄弟
5.『ツリー・オブ・ライフ』テレンス・マリック
6.『ソーシャル・ネットワーク』デヴィッド・フィンチャー
7.『インサイド・ジョブ』チャールズ・ファーガソン
8.『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』ブラッド・バード
9.『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』スティーブン・スピルバーグ
10.『マイ・バック・ページ』山下敦弘

イーデン・コーキル
ジャパン・タイムズ編集局学芸部長。1997年の来日以来、長沢アートパーク・アーティスト・イン・レジデンス事業、森美術館を経て、 2007年よりジャパン・タイムズ勤務、2010年より現職。シドニー大学文学部日本文化学科では、名作文学を原作とした市川崑監督 映画(『野火』、『炎上』と『ビルマの竪琴』) を研究。

日本公開新作映画ベスト10
小倉聖子
1.『永遠の僕たち』ガス・ヴァン・サント
間違いなくガス・ヴァン・サントの中で最高傑作だと思う。故ホッパーの息子、ヘンリー・ホッパーとミア・ワシコウスカが異常に良い。2人が出会って、道端でキスするシーン、最後のヘンリーの顔まで一コマ一コマが頭に焼き付いている。大事な人を失ったとき、人は笑えるんだ、ってエンディングにはやられた。ビートルズで始まるオープニングも素敵。
2.『ベルヴィル/東京』エリーズ・ジラール
日仏学院のカイエ週間で拝見して、心を奪われた。倦怠期を迎えた夫婦がどうやってその倦怠期を越えていくのか、というありきたりの話だが、観ている私までドキドキが止まらず、サスペンス映画を観ている感覚になった。台詞やロケーション、カメラワークも好きなのだが何と言ってもヴァレリー・ドンゼッリという女優の演技に圧倒された。怒りが最高潮に達した時、何も話せなくなる様は見事!
3.『果てなき路』モンテ・ヘルマン
最初に見た時、「この2時間私は映画を観てた?」という印象が残った。オープニングから引き込まれていく映像美、そしてストーリーを追っていた自分がスクリーンの中に取り残されていく快感を味わった、初体験感覚映画。映画のテーマソングも、ここまでマッチしていると何も言えない。
4.『ヒア アフター』クリント・イーストウッド
3.11が起きる前に見ていたのだが、本当に感動した映画だった。何か事件が起きたことによって狂っていく人々の人生。そんな人生も輝く瞬間が来るんだと感じた感動作だった。マット・デイモンの繊細な演技もよかったな。
5.『キッズ・オールライト』リサ・チョロデンコ
女同士の笑い声がスクリーンから聞こえるだけでほっとした。家族の形はひとそれぞれで、その形を疑い初めてしまうと全てが崩れていく、どこにでもありそうな話がレズカップルの話になるとこうも変わるものかというカルチャーショックもあった。ジョニ・ミッチェルを歌うシーン、アネット・ベニングが本当に良い。リサのセンスにも拍手〜!
6.『サウダーヂ』富田克也
今まで見た邦画の中で一番リアルだった。山梨・甲府でかっこつけることしか考えてないHIP・HOPラッパーの男が、山梨に住むブラジル人のラップを生で聞いて“完全に俺らが負けてる”って思うその瞬間、切なく感じた。誰しも“絶望感”を味わうことがあって、それを味わえるか味わえないかは、お前ら次第!というメッセージを感じた。
7.『ラブ・アゲイン』グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
これこそエンターテイメント・ムービー。綿密に計算された見事な脚本にも驚いた。観ている間、忘れていた付箋をよびおこす出来事が見事!マリサ・トメイっていつも本当にいい脇をやってくれます。
8.『Peace』想田和弘
悲しくて、悲しくて、悲しくて、そんな感想を抱いた。もう先は長くないとわかっているおじいちゃんの家にヘルパーとして行く監督の義理の母。家に入る前にスプレーをして入っていく姿は、人の家に入る仕草にまったく見えなかった。おじいちゃんの何でもないその話に耳を傾けているだけで涙が止まらなくなってしまった。
9.『ザ・タウン』ベン・アフレック
こういう映画がまだアメリカで作られているという嬉しさ。その街から抜け出すことがなかなか出来ない一人の男の苦しさが伝わる。俳優としても活躍するベン・アフレックのプロデュース作品に今後も期待したい。
10.『ソウル・キッチン』ファティ・アキン
良い映画はキャラクターが完璧に立っている!と思うことが多い。この映画もそんな映画だった。それに加え裏テーマの“ぎっくり腰”。ぎっくり腰って万国共通なんだーと思うと笑えた。ファティ・アキンの新しい才能発見という感じ。

小倉聖子
映画宣伝パブリシスト。『引き裂かれた女』、『ゴモラ』、『歴史は女で作られる』、『果てなき路』、爆音映画祭などの宣伝を担当。

日本公開新作映画ベスト10
鍛冶紀子
1.『サウダーヂ』富田克也
もう、とにかく圧倒的。まだ観ていない人、とくに同年代の人たちにはぜひ見て欲しい!私たちの国は今こうなんだよ!知ってはいたけど、改めて頭をはたかれた気分。「この街も終わりだなぁ」が脳内にこびりついている。シャッター通りと化したアーケードに(カーステレオから)爆音で鳴り響く氷室京介!このリアル!
2.『さすらいの女神たち』マチュー・アマルリック
待望のマチュー監督作正式公開。美しいショットの数々にマチューの映画愛を感じた。鏡台のライトがひとつふたつと灯っていくオープニングシーンは見事。一瞬にしてバーレスクダンサーの世界へ誘われた。それにしても、マチューは女の包容力を引き出すのがホントに上手。
3.『ツリー・オブ・ライフ』テレンス・マリック
思うところはたくさんあるけど、やはり挙げずにはいられない。映画館で観たのだけれど、劇中立ち去る人の多かったことも印象的です……。
4.『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン
2011年で一番泣いた作品。役者たちがいい。特にラストシーン、壇上で語るミリキ・アラゴン!スペイン内戦時代の喜劇役者たちへ捧げる言葉は、もはや演者としてではなく、あの時代を共に生きた彼自身の言葉として観る者の胸を打つ。
5.『ブルー・バレンタイン』デレク・シアンフランス
あんなにも高まった愛なのに。やがてすれ違い始め、そして崩壊して行く様は切なすぎるし痛すぎる。強力なリアリティを持ったヒリヒリ感。自身の体験を踏まえ、構想から完成まで10年以上の月日をかけたという本作。デレク・シアンフランスの次回作が気になる。
6.『ツーリスト』フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
徹底した「アンジェリーナ・ジョリーありき」で、全てが華麗かつ非現実。ショットの強さも相まって、最後までグイグイと魅せられた。アトラクション的満足感の高かった一本。
7.『ブラックスワン』ダーレン・アロノフスキー
原作が山岸凉子なんじゃないかというほどに山岸凉子的!母娘の依存、ライバルとの駆け引き、男性に対する恐れと憧れ。ナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技がまた良し。花の24年組好きにはたまりませんでした。
8.『トスカーナの贋作』アッバス・キアロスタミ
ジュリエット・ビノシュの魅力を改めて確認。『ブルー・バレンタイン』同様、男とは?女とは?夫婦とは?といった問いが脳内をグルグル。キアロスタミといえば、次回作のためWeb上で資金の一部を募った結果、目標金額を超える出資があったことも2011年のニュースのひとつ。
9.『無言歌』ワン・ビン
こういう映画人が中国にいるという事実。オーディトリウム渋谷で開催されたワン・ビンの特集上映へ足を運べなかったことが悔やまれる。
10.『猿の惑星 創世記』ピーター・チャーニン
3月11日の原発事故で、私たちは自分たちがいかに身勝手かつ強欲であったかを知らしめられたわけだが、本作で描かれているのもまた同様に人間の傲慢さである。偶然とはいえ、2011年に公開されたということに意味を感じざるを得ない。

鍛冶紀子
Web制作業、ライター業のかたわら、古道具店を営む。
http://www.negla.net/

日本公開新作映画ベスト10
江口研一
1.『ブンミおじさんの森』アピチャートポン・ウィーラセータクン
2.『エッセンシャル・キリング』イエジー・スコリモフスキ
3.『サウダーヂ』富田克也
4.『引き裂かれた女』クロード・シャブロル
5.『未来を生きる君たちへ』スザンネ・ビア
6.『名前のない少年、脚のない少女』エズミール・フィーリョ
7.『キッズ・オールライト』リサ・チョロデンコ
8.『ゴーストライター』ロマン・ポランスキー
9.『光のほうへ』トマス・ヴィンターベア
10.『エンディングノート』:砂田麻美

日本公開新作映画ベスト12
上原輝樹
1.『刑事ベラミー』クロード・シャブロル
2.『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』マルコ・ベロッキオ
3.『ヒア アフアー』クリント・イーストウッド
4.『トスカーナの贋作』アッバス・キアロスタミ
5.『灼熱の魂』ドゥニ・ヴィルヌーヴ
6.『ブルー・バレンタイン』デレク・シアンフランス
7.『サウダーヂ』富田克也
8.『ある娼館の記憶』ベルトラン・ボネロ
9.『ツリー・オブ・ライフ』テレンス・マリック
10.『パレルモ・シューティング』ヴィム・ヴェンダース
11.『ウインターズ・ボーン』デブラ・グラニク
12.『NINIFUNI』真利子哲也

2011年はいろいろな意味で忘れ難い一年となった。

マックス・オフュルスの遺作『歴史は女で作られる』で、大学閉鎖や大臣更迭に怒った左派の学生たちが、ローラ・モンテス追放を叫ぶ暴動を起こし、ルードヴィッヒ一世が身を寄せるローラの大邸宅を襲撃するという場面で、ローラの御者が「大したことはない。革命なんていつものことだ。」という。「革命なんていつものこと」、確かにヨーロッパではそうなのだろう。しかし、私たちが住むこの国はそうではない。

インターネットやSNSツールの普及と共にダイナミックな広がりを見せた「アラブの春」や「Occupy Wall Street」といった“変化”を求める人々の脈動が世界を席巻する中、ネットが普及していない北朝鮮のような国は別として、これだけネットもSNSも普及しているかに見えるこの国で“革命”の二文字をあまり目にしないのは不思議なことと言えるのかもしれない。しかし、3.11のような自然災害と人災が相俟った事態が起きてしまうと、当面はだれも“革命”なんてことを考える余裕はなくなるというものだ。

今回、このリストに選出した『サウダーヂ』と『NINIFUNI』は、いずれも3.11以前に作られた作品だからというべきなのかもしれないが、日本社会の本質的な変化を希求する力強さと不穏さを漲らせた傑作である。こうした映画が生まれ続ける限り、この国にも変化への萌芽が残されているのだと思う。

そして、“映画”ということで一年を振り返れば、クロード・シャブロルの特集上映で多くのシャブロル作品に耽溺することが出来たのは、本当に幸せな体験だった。今まで観たことのなかった作品に触れ、シャブロルが単に“偉大なる商業映画の監督”なだけでなく、“偉大なるマニエリスト”なだけでもなく、人間性のエニグマと格闘し続けた真に偉大な映画作家であることを(今更ながらも)知ることが出来たのだから。


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