OUTSIDE IN TOKYO ENGLISH
2010 BEST 10 FILMS

2011.2.14 update
イーデン・コーキル(ジャパン・タイムズ編集局学芸部長)

小倉聖子(VALERIA/映画宣伝パブリシスト)

鍛冶紀子(OUTSIDE IN TOKYO)

江口研一(OUTSIDE IN TOKYO)

上原輝樹(OUTSIDE IN TOKYO)

日本公開新作映画ベスト10
イーデン・コーキル
1.『悪人』李相日
2.『ゴールデンスランバー』中村義洋
3.『シャーロック・ホームズ』ガイ・リッチー
4.『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグロー
5.『告白』中島哲也
6.『シャッター アイランド』マーティン・スコセッシ
7.『インセプション』クリストファー・ノーラン
8.『ソルト』フィリップ・ノイス
9.『かいじゅうたちのいるところ』スパイク・ジョーンズ
10.『マイレージ、マイライフ』ジェイソン・ライトマン

イーデン・コーキル
ジャパン・タイムズ編集局学芸部長。1997年の来日以来、長沢アートパーク・アーティスト・イン・レジデンス事業、森美術館を経て、 2007年よりジャパン・タイムズ勤務、2010年より現職。シドニー大学文学部日本文化学科では、名作文学を原作とした市川崑監督 映画(『野火』、『炎上』と『ビルマの竪琴』) を研究。

日本公開新作映画ベスト10
小倉聖子
1.『ローラーガールズ・ダイアリー』ドリュー・バリモア
ドリュー!初監督と思えないくらい、よくぞやってくれた!ありきたりな話だけど、観客の期待を裏切らない、当たり前のラブコメロードを突っ走ってくれた。ジュリエット・ルイス×ドリュー・バリモアの対決シーンで、女優魂を感じ涙が出ました。ありがとうございます、この映画を作ってくれて。
2.『悪人』李相日
久しぶりに日本映画の底力みたいなものを感じた映画だった。CGやTVタレントなどの出る映画があふれている中、孤独な女性と孤独な青年の不器用ながらにも一生懸命生きていく様がずしずしと心に響き、見終わったあとにドーンと頭をたたかれた気になった。人はいつも寂しくて、目の前にある温もりを1度味わってしまうとそこから抜け出せないんだと思う。
3.『(500)日のサマー』マーク・ウェブ
はっきり言ってこれはラブストーリーだと思った。マイケル・ダナの楽曲のセンスに脱帽。映画にとってこんなにも音楽が重要かと思うほど、素敵な音楽がここ!っという時にきちんと流れてくるセンスにただただ感動していた。男の子目線という捕え方をされたこの映画は女性目線でも十分楽しめるあるひとつの恋の物語だった。
4.『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』ジョニー・トー
良い映画はいつも最初の5分でぐっと心を掴まれることが多いが、この映画もそうだった。オープニング5分のあの銃撃爆音で、始まったジョニー・トーという感じで最後まで突っ走った。香港映画の良さを改めて感じた1本。
5.『ソウル・パワー』ジェフリー・レヴィ=ヒント
2010年の爆音映画祭のオープニングで上映したときに見たが、映画館がコンサート会場みたいになって、お客さんみんながスクリーンのJ・Bに向かって「JB——!!」とか叫んでいて、こんなにも楽しんで映画を見れて幸せと思う瞬間だった。映画の中身も最初はモハメド・アリ部分が長いなと思って我慢していると、急にコンサートが始まって、それからはずっと脳震盪を軽く起こしている感じになりました。
6.『キック・アス』マシュー・ヴォーン
ニコラス・ケイジが一番輝いていたのではないか、と思う。泣かせる演技も見せてくれた。中盤、ヒット・ガールが殺しまくるあのシーンは見事!
7.『ゴーストライター』ロマン・ポランスキー
何も起こらないようで、起こっていくサスペンスの醍醐味だが、全てが完璧だった。オリヴィア・ウィリアムズが素晴らしく良いのだが、キム・キャトラルも何だか良い感じでエロさが出ていた。ポランスキー映画の女優の凄さを感じた。ポランスキーまだまだこれからが楽しみになった。スコリモフスキの画が飾ってあるシーンでちょっと喜びました。
8.『インセプション』クリストファー・ノーラン
やっぱりこの人の頭の中はおかしかったんだと。クリストファー・ノーランの頭の中が全て映像になっていて。横になりながら走っているシーンとか客観的にこれをスクリーンで見ている自分に笑えた。内容云々ではなく、こういう映画を作ってしまったこと自体に圧巻。
9.『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』サム・テイラー=ウッド
2人の母親の名演技に感動。ジョン・レノンの音楽への熱い思い、2人の母親が支えた日々など、映画を通して一人の青年と2人の母親がとても愛おしく思えた。もちろん初期の頃のビートルズの活動も想像しながら見れたところも良かった。
10.『ユキとニナ』諏訪敦彦、イポリット・ジラルド
最初から、これは妄想なのではないかと思う雰囲気に駆られてみていた。途中、森を抜けると違う世界にいたという発想には驚いた。あの空気感みたいなものは一体何なんだろう。ずっと、フランスか日本どこに自分がいるかわからなくなる変わった映画だったが、幸せな気分になれた。

小倉聖子
映画宣伝パブリシスト。『アンナと過ごした4日間』や『シルビアのいる街で』、『ソフィアの夜明け』、爆音映画祭などの宣伝を担当。

日本公開新作映画ベスト10
鍛冶紀子
1.『シルビアのいる街で』ホセ・ルイス・ゲリン
2010年で一番興奮した映画。視線と音の使い方が抜群にうまい。時おり暴力的に差し込まれるマイノリティたちにハッとさせられるが、それもひとつのアクセントになっていて、女と男の足音が生み出すリズム、街の雑踏が奏でるノイズと合わさって、まるで映像という名の音楽を観て(聴いて)いるようだった。新たな映画体験。実験的な要素が濃い作品だっただけに、今後ホセ・ルイス・ゲリンがどんな作品を撮るのか気になるところ。
2.『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン
待ちに待った公開。これぞデプレシャン!内容の圧縮率の高さはさすが。「家族」というこの世で最もめんどくさくて、最も頼りになる集団を見事に描いた傑作。それにしても、本作「クリスマス・ストーリー」とフランソワ・オゾンの「しあわせの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴはすばらしかった。これまでの地位に安住することなく挑戦し続ける姿勢には感動を覚える。
3.『息もできない』ヤン・イクチュン
夜の漢江のあのシーンには本当に胸が震えた。この圧倒的な寂しさ!この寂しさや苛立ちや閉塞感は、今の日本にも通ずるものがあるはずなのに、これだけ力のある作品が日本から生まれないのは何故だろう。暴力がただの身体的運動としてではなく、切なさや苦しさや愛おしさややりきれなさを伴って振りかざされ、言葉よりもずっと雄弁に、生きることの苦しみを語る。家族という縛りを描いている点では「クリスマス・ストーリー」と同じだが、その手法はまさに対極的。きれいごとじゃない、清濁併せ飲んだ世界。
4.『わたしを離さないで』マーク・ロマネク
ミュージックビデオでは独創的な印象の強いマーク・ロマネクだが、本作では奇をてらうことなく撮った感があり好感が持てた。主役の三人とそれぞれの子役のよく似ていることや、小説に違わないロケ地の選定など、ひとつひとつの丁寧さが全体のクオリティを上げていて、この世であってこの世でない狭間が強いリアリティを持って描かれている。アンドリュー・ガーフィールドの泣き叫ぶシーン、キャリー・マリガンが静かに草原を見つめるシーンは今思い出しても胸がつまる。主役三人のキャスティングが見事。
5.『白いリボン』ミヒャエル・ハネケ
こんなにも深く重い問いを、ただ難しく説くのではなく、ちゃんと“ストーリー”に乗せて突きつけることができるハネケ。さすが。デジタル処理がほどこされたモノクロはクリアで奥行き感がなく、のっぺりとした質感が描かれる時代の過去形とは裏腹に、この問題が今も私たちの中に潜んでいることを示していて効果的だった。
6.『ブロンド少女は過激に美しく』マノエル・ド・オリヴェイラ
もうラストシーンがすご過ぎる。ただただ脱帽。ポルトガル映画祭で見た「階段通りの人々」も印象深い。
7.『ノルウェイの森』トラン・アン・ユン
トラン・アン・ユンの映像美健在。ロケーションはもちろん、トラン・ヌー・イェン・ケーことイェンケ・リュゲルヌの美術の力もあって、日本であって日本でない異空間が見事に作り出されていた。松山ケンイチの演技がすばらしい。
8.『インセプション』クリストファー・ノーラン
ハリウッド映画の真骨頂ともいえるCG力でワクワクさせてくれた。クリストファー・ノーランが追い続けてきた「時間」というテーマに「現実とは」という疑問符が加わり更なる深みを見せた。あのアクションシーンをデカプリオではなくジョセフ・ゴードン=レヴィットに演らせたのも、ハリウッド大作としては画期的?
9.『17歳の肖像』ロネ・シェルフィグ
大人の世界に触れたときのドキドキ感、フランスへの憧れ、学校や両親への反発。女子なら誰もが思い当たるふしがひとつはあるはず。大人になった今は父親の気持ちが痛いほどよくわかる。女性だからこそ教育を受けるべきだと説く女教師にも深く共感した。
10.『シャーロック・ホームズ』ガイ・リッチー
こんな解釈があったか!と思わず手のひらを打った。凝り固まったホームズ像に新たな息吹を吹き込んだ痛快アクション映画。衣裳や美術なども見ていて楽しい。連発されるシリーズ物には正直辟易していたが、これは続編が楽しみ。

鍛冶紀子
Web制作業、ライター業のかたわら、古道具店を営む。
http://www.negla.net/

日本公開新作映画ベスト10
江口研一
1.『息もできない』ヤン・イクチュン
2.『ユキとニナ』諏訪敦彦、イポリット・ジラルド
3.『フローズン・リバー』コートニー・ハント
4.『何も変えてはならない』ペドロ・コスタ
5.『ぼくのエリ 200歳の少女』トーマス・アルフレッドソン
6.『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン
7.『白いリボン』ミヒャエル・ハネケ
8.『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
9.『瞳の奥の秘密』ファン・ホセ・ カンパネラ
10.『オーケストラ!』ラデュ・ミへイレアニュ

『ゴダール・ソシアリスム』ジャン=リュック・ゴダール
『ハデウェイヒ』ブリュノ・デュモン
『Dr.パルナサスの鏡』テリー・ギリアム

日本公開新作映画ベスト10
上原輝樹
1.『ゴダール・ソシアリスム』ジャン=リュック・ゴダール
2011年中東で起きている一連の動きとも決して無縁ではない、ジャン=リュック・ゴダールの新作。
2.『ゴースト・ライター』ローマン・ポランスキー
スコリモフスキ『エッセンシャル・キリング』、ゲリン『ゲスト』と並ぶ、2010TIFFベスト・フィルム。ジョセフ・ロージー的主人公がみるみる内に追いつめられて行く『テナント』『フランティック』『赤い航路』の系譜に連なる、久々の真性ポランスキー映画。
3.『アンプロフィット』ジャック・オディアール
『旅立ち』『テルマ、ルイーズとシャンタル』『クリスマス・ストーリー』『リグレット』『ハデウェイヒ』と豊作だったフランス映画祭ラインナップの中でも郡を抜く傑作。2009年カンヌ国際映画祭審査員グランプリ作品。刑務所を舞台に、“スーパーナチュラル”な色づけが成されたピカレスク・ロマン。フランス映画祭でインタヴュー予定だったが、監督の来日中止が悔やまれる。
4.『人生万歳!』ウディ・アレン
ニューヨークへ戻ったウディ・アレン。ここ10年のアレン作品の中での最高傑作にして説明不要の快心作。
5.『白いリボン』ミヒャエル・ハネケ
『白いリボン』公開に併せて行われたハネケ特集上映が素晴らしかった。『隠された記憶』は、奇しくも同日にアテネ・フランセで上映されたストローブ=ユイレ『ヨーロッパ2005年、10月27日』と同じテーマ“フランスにおける人種差別の根深さ”を扱い、淀みない端正な映像で、人間の心に潜む他者への“恐れ”が差別感情へと転ずる推移をサスペンススリラーとして描く傑作であり、観客に“忍耐”を要求する映画『タイム・オブ・ザ・ウルフ』は、その先の先にいずれ訪れる、あまりにも切なく美しいエンディングシーンに我を忘れる。もうただただ素晴らしい!としかいいようがない感動的な作品だった。
6.『ソフィアの夜明け』カメン・カレフ
観た直後、あまりの素晴らしさに言葉を失った。2010年、一番心で泣いた映画。
7.『シルビアのいる街で』ホセ・ルイス・ゲリン
全く新しい感性の登場に興奮を覚えた。本作も素晴らしいが、ジョン・フォードの故郷アイルランドを訪ねた『イニスフリー』も本作に輪をかけるように素晴らしい。これからの活躍が最も楽しみな映画作家の最右翼。
8.『ユキとニナ』諏訪敦彦、イポリット・ジラルド
東京日仏学院での諏訪監督とイポリット・ジラルドのティーチイン、東京日仏学院院長ロベール・ラコンプ氏のご子息(小学生位だろうか)からの「なぜ、ユキは森を抜けると日本に着いていたのですか?」という質問に対する諏訪監督の容赦のない切り返しに、子供を子供扱いせず対等な存在として接する諏訪監督の演出姿勢が垣間見えた思いがした。私の中で、そんな映画から流れ出てきたような特別な時間と空間を体験することができた一夜と『ユキとニナ』は渾然一体の映画体験を成している。
9.『インセプション』クリストファー・ノーラン
本作は、『ソーシャル・ネットワーク』の出現によって決定的に終わったように見える、ゲームと映画の蜜月の時代と言われた<ゼロ世代>の最後を打ち上げた一作として記憶に残るに違いない。
10.『何も変えてはならない』ペドロ・コスタ
ペドロ・コスタの『何も変えてはならない』は、ポルトガル映画祭でのマノエル・ド・オリヴェイラの長編デビュー作『アニキ・ボボ』、ジョアン・セーザル・モンテイロの怪作『黄色い家の記憶』、アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロの奇跡のように美しい映画『トラス・オス・モンテス』が上映され、アテネ・フランセでペドロ・コスタによってポルトガル映画史が語られ、ジャンヌ・バリバールがSUPERDELUXでライブを行い日仏学院で特集上映が組まれた、そんな2010年東京の夜の記憶と共にあり続けるだろう。

『幻の薔薇』アモス・ギタイ
『バッド・ルテーナント』ヴェルナー・ヘルツォーク
『ブライト・スター 〜いちばん美しい恋の詩(うた)〜』ジェーン・カンピオン
『ガールフレンド・エクスペリエンス』スティーブン・ソダーバーグ
『アウトレイジ』北野武
『マチェーテ』ロバート・ロドリゲス

なお、『スプリング・フィーバー』は、昨年の番外編で触れているので今年のリストからは除外。


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