OUTSIDE IN TOKYO
YOSHIGAI NAO INTERVIEW

吉開菜央『吉開菜央特集:Dancing Films』インタヴュー

7. 自転車シリーズは、お婆ちゃんになっても継続したい

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OIT:順番でいきますと、『梨君たまこと牙のゆくえ』の次が『Grand Bouquet』(2019)、そして、『Wheel Music』(2019)ですね。先に『Wheel Music』の話をお聞きしたいんですけど、これはもう完全に日記映画ですよね。
吉開菜央:そうですね。
OIT:日記だからかなりプライベートな感触で、ご自分でカメラを回されているのと、あともう一人カメラマンの方が恐らくいらっしゃったんですよね。あの川は多摩川ですか?
吉開菜央:北千住で、荒川です。
OIT:逆さまの金魚が面白かったですけど、実際にいるんですよね。
吉開菜央:そう、いるんです、私はずっと気になってて。本当にこれ可哀想すぎるって思って、このまま死んで腐ったりして、同じ水槽の魚たちに影響を与えたら大変と思って、ピンポンしてお知らせしようかと思ったんだけど、その勇気がなくて向かいの焼き物屋さんに報告しに行ったんです。そうしたら、あれ、生きてんだよって言われて、その時にばーって撮った話が入ってる。
OIT:そうなんだ、向かいの人が(笑)。
吉開菜央:みんな気になるんですよね、だから通りがかりの人が気づいてピンポン押して知らせる人もいるらしいです、私はそこまでしなくて良かったと思って(笑)。逆に本当に貪欲ですよね、食べる時だけは動いて、あいつああやって生きてるんですよね。もう流石に死んでるとは思うけど。
OIT:まあ映画の中で、永久に生きててもらっていいです(笑)。
吉開菜央:そうですね、本当にあの後、なくなってったものが結構多くて、最近マンションがめっちゃ建ってて、道に埋まってる石とかどんどんなくなっちゃってたりしてて、あの時撮っておいて良かったとは思っています。
OIT:東京はどんどん変わっちゃうから、記憶が失われてくって感じですよね、建物がなくなったり。あと、面白かったのがあのハムスター(笑)。
吉開菜央:でもあれ、ハムスターじゃないらしいんですよ、ヤマネらしいんです。
OIT:ヤマネって何ですか?
吉開菜央:ヤマネっていうモモンガの一種らしいです。
OIT:ヤマネっていう正式名称ですか?
吉開菜央:そうです、ある方が試写の時に教えてくれたんです、「吉開さん、あれはハムスターじゃなくてヤマネですよ」って。色々な所で展示とか上映もやったけど、初めて間違いに気づいて教えてくれる人が現れました。
OIT:回転してるやつが一個だけ引っ掛かってる、ああいうの撮り続けてるところが面白いなと(笑)。
吉開菜央:奇跡だ、こんな映像撮れないぞと思って、ドキドキしながら撮ってましたね(笑)。
OIT:いつもあいつ引っ掛かってるなと思って撮りに行ったわけじゃなくて、たまたま見に行ったんですか?
吉開菜央:たまたまです、多分あいつ落っこちちゃったんだと思います。木の上にいっぱい突き刺さってたじゃないですかヤマネが。
OIT:なんか雑な感じで(笑)。
吉開菜央:そう、あれは多分何かの弾みで落ちちゃって、それで、あんな風に転がされ始めちゃったんだと思うんですよね。それがもうなんていうか、人生ってこんな感じだよなとか思っちゃったりして(笑)。
OIT:見てるだけじゃそうならないんだけど、それが映画になると“人生ってこんな感じ”ってなる。
吉開菜央:そうそう、しかも私自転車乗ってたし、回ってるし、ハムスターってこうやるしみたいなことが、全部私には繋がっているように思えました。
OIT:面白かったです、自転車シリーズは継続した方がいいですね。
吉開菜央:したいです、自転車乗りのばあばみたいな感じでお婆ちゃんになってもやりたい(笑)。
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