OUTSIDE IN TOKYO
YOSHIGAI NAO INTERVIEW

吉開菜央『吉開菜央特集:Dancing Films』インタヴュー

9. 映画とか小説を花に喩えるんだったら、
  現代人の体をスパンと切ったら花だらけだろうなと思った

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OIT:黒塗りバージョンっていうのは、そういう事情があったわけですね。やっぱりその花っていうのがアイデアとして非常に面白いですよね、花じゃなくてリアルな血だったら、ちょっとどうだろうなっていう感じになると思います。“花”にしようと思ったのは感覚的なものですか?
吉開菜央:そうですね、最初にパッと思いついたのが花だったんですけど、後でよくよく最初のプロットみたいなメモを読み返してみたら、そこに覚書みたいな感じでレイ・ブラッドベリの小説「華氏451度」の一節が書いてあったんです。そこには現代人っていうのは、花が土とか水を養分にして生きているんじゃなくて、花が花を食べてる時代に生きてるみたいなことが書いてあった。「華氏451度」って、結局は本を燃やす話だったじゃないですか、多分そういう文字によるエンターテインメントだったりとかを食べてるっていうことなのかなと。レイ・ブラッドベリがどういう意図で書いたかは、私の解釈なので違うかもしれないんですけど、そういう文字のような、本当は食べ物にならないもの、自分の肉体にはならないもの、私は今自分で動物を殺して肉を食べてないし、自分で土を耕してお米を食べてないし、むしろ映像とかそういうエンターテインメントを作って食べていってるわけですよね。よくよく考えると東京とか都市の人って、特にそうじゃないですか。だからもしエンターテインメントを花に喩えるんだったら、映画とか小説を花に喩えるんだったら、現代人の体をスパンと切ったら花だらけだろうなと思ったんですよね、そういうこととかも後で気付いたりして、それでああそうか、じゃあこういう描写にしようということをどんどん深めていく感じでした。
OIT:なるほど、それは面白いですね、感覚的なものがありつつ、それだけじゃない。『Grand Bouquet』もコンテみたいなものを作ったんですか?
吉開菜央:作りました、やっぱり何をちゃんと絵にしてどれくらいの秒数CGが必要なんだろうとか、予め分かってないと予算とか時間とかも組み立てることが出来なかったので。絵コンテっていうよりビデオコンテを作りました。その時にジャンプカット、ギュンって近づくアクションの編集を発見して、そうしてる内に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)とか、こういうシーンなかったかなとか思って(笑)、よくよくコマ送りで見てたら同じことをやってた。進んでいく進み方も2コマ先までギュンって飛ばしたり、その一瞬のフレームに一個目みたいな画入れてたり、なんかコマで見ながら、こういうのを使ったら面白そうっていうのを発見していきました。
OIT:その感覚は『Wheel Music』とかにもありますよね、あと『梨君たまこと牙のゆくえ』のGoogleビューとか、最初にパソコンの画面として出てなくてトリミングされているから、一瞬この動き何みたいに思うんだけど、あれは編集で発見されたわけじゃなくて、こういう風に撮ってみようっていうのが撮影の前にあったわけですか?
吉開菜央:そうですね、撮影の時に何となくあったけど、編集で繋がるかな?みたいなことは思ってました。でも撮っておいたら上手く後でああいう風に出来るかもしれないなと思ってました。
OIT:Googleはインターネットテクノロジーですけど、そういうものっていうのは当然、僕らの身の回りにあって、自然にアイデアの中に入ってきている。
吉開菜央:そうですね、それこそ『梨君たまこと牙のゆくえ』で都会の方に住んでるあの子って外に出なくても世界は超広いんですよね。ずっと家の中にいるんだけど、逆にさとこは鳥取に住んでいて、チャリで地道に移動するけど、鳥取っていう土地から出られなかったりする。
OIT:そういうキャラクターにも、ご自分がそれぞれに投影されていますよね。
吉開菜央:まさにそうです、っていうか両方私です。本当にダンサーで体を動かす自分もいる、それは最近衰えてきてるんですけど、年齢も重ねたりして(笑)、でも本当にああやって家にこもってただひたすらパソコンの画面だけを見て、手と目しか動かさない私も実際にいて、それでもそこから凄く世界が広がってる自分もいたりして、本当に両方だな、それは巡り巡りながら、出たり入ったりしながらやってる私っていうのがあって、でも結構みんなもそうですよね。
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